父親になること その3

 2005年(平成17年)の建国記念日に、長男が生まれました。


 陣痛がきて2人で病院に向かったのが前日の夜。それからいろいろあって昼過ぎに病院判断で帝王切開が選択されました。医者から夫である私の同意が求められました。本人の意思だけじゃ手術ダメなんですね。


 出産に関して結構知らない事だらけで、陣痛がきても救急車呼べないとか、出産は病気じゃないから保険の対象外だとか、でも帝王切開は手術するから保険が効くとか、いやホント、初めてというのは何でも大変です。

 さて、出産も入院も手術も初めての女房は当たり前ですが一番大変です。不安で仕方ないわけです。というわけで入院も手術も経験済みの私は女房に小型ラジオを買って渡しました。入院中はラジオが一番役立ちます。


 そんなこんなでいろいろありましたが、手術は無事に終わり、やたら大きな男の子が生まれてきました。

 どのくらい大きかったかというと、新生児用の保育器から足がはみ出したくらい。


 病室の女房を見舞うと、少し顔色が悪かったものの、特に問題ないそうだ。そりゃ腹切ってるんだから元気いっぱいとはいかない。

 でも、女房はよく頑張った。

 この数日前、駅前で母親が小さい子の手を引いている姿を、「あれいいなあ、うらやましいなあ」という表情で見ていた女房だ。よかったな、これからは2人で嫌になるくらい赤ん坊の世話ができるぞ。とにかくでかした。


 女房の実家に連絡して、母子ともに問題なしと報告。うちの実家にも連絡。

 私の友人知人たちにも片っ端から連絡。私の知人たちはメールが連絡の主体なので、当時のガラケーからメールで連絡。この時使っていた機種はSANYOのケータイで、半年後にドラマ版の電車男で伊藤淳史が使用したのと同機種でした。


 さて、とにかく自分にも子どもができた事、自分が父親になった事がうれしくて仕方なく、黒帯取った時以来の達成感で電話やメールをしまくりました。

 いや、冷静に考えれば頑張ったのは女房でこちらはたいした事してないのですが、なんせ舞い上がってますので頭がキチンと働いてない。とにかく「今日、自分はパパになったんだ!」と誰かと話をしたくてたまらない。ケータイで知り合いにかけまくった後に、まだ話し足りない自分が何をしたかというと


 キャバクラ行きました。


 えー、これを最初から読んでいる皆様方にお伝えします。

 当エッセイは、面白おかしくするために話を盛るようなことは一切しておりません。

 むしろ、書いたら面白いんだけどいろいろとマズイので話を削っている部分が多いのです。


 しかし、長男が生まれた日に、病院に女房と赤ん坊置いてキャバクラ行ったというのは、冷静に考えるとヒドイ父親だなあと。

 ただ、もっとヒドイ実例を知ってまして、長男出産で奥さんが入院してるのをチャンスと考えて、バーのカウンターで女性をナンパしてホテルに行ったら、相手に見慣れたモノが付いていてその後が大変だったという知人がおります。


 それはそれとして、私の話ですね。

 まず、これだけは明確にします。

 今回、女房に謝罪して許可もらってから書いてます。


 では本編再開。


 ラーメンか牛丼か忘れましたが、しっかり晩飯食べてから駅前のキャバクラに行きました。

「わー、お子さん生まれたんですかー! おめでとうごさいます!」てな会話をしたくてしたくて入ったのですが、サービスのつもりか「今日が初日の新人さん」がつきました。

 で、会話が全然始まらない。

 何かいてほしいんだが、何も訊いてくれない。緊張しているんだとは思うけど。

 こっちが気をつかって質問してしまう。

 今日初めてなんだ。歳はいくつ? じゃあ学生? 大学どこ?


 なんと大学の後輩でした。

 で、空手部所属だという。

「剛柔流なんだ、俺、松濤館」

 そこからは一転して空手あるあるの話でめちゃくちゃ盛り上がってしまいました。キャバクラで女の子とする話じゃないよね。周りドン引きだったと思う。すみません。

 とにかく、世間一般の基準とはえらく異なる形になりましたが、キャバクラで会話を楽しむことができました。


 というわけで、今日は風呂と台所を洗います。ごめんなさい。

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