金澤弘和「館長」のこと その4
金澤弘和前館長の性格についてもう少し。
第15話で日本空手協会から除名された事を書きましたが、そこを書くために「我が空手人生」を読み返しても処分の理由に今ひとつ納得できませんでした。昇段審査のカネを協会に入れなかったと噂されたとか書いてありますが、どうにも納得できない一番の理由は「誰の意思で除名処分がなされたのか」が不明確な点でしょう。
これ、当然存在している「金澤弘和を組織から排除する」意思を決定した個人もしくは集団を、わざと書かないでいるんだと思います。
人の悪口は決して言わない、事実であってもその人の評価を下げるようになる事は口にしない、そんな人でした。
話を変えます。
茶帯になって1年過ぎると、黒帯相手の組手も増えていきます。
そんな状況での稽古の時です。
相手の横蹴込みをすくい受けで受けてから、こちらの突きで決める、この動作の時、蹴込みをすくい受けで受けたら黒帯の先輩がバランスを崩して背中から床に倒れてしまったのです。
想定外の事態にどうしていいか分からず、私はその場でオロオロしてしまいました。
途端に市原先生が怒鳴り声を上げてドシドシと床を踏みならしこちらに来ます。 まなじりが釣り上がって怒りの形相で私と先輩の前に立つ市原先生。もう怒られるのは既定の事実。こっちの受けが下手だったからだ、そう思っていたら
「なぜとどめを刺さない!」
そう言って、まだ床に倒れたままの先輩に向けて、市原先生は下段突きの動作をしました。目は「解ったか!」という感じでこちらを
倒れている先輩は、「面目ない」という表情で頭を
市原先生の性格は揮発性の危険物ですぐに爆発しますが、べとつかずサラッとして後に残りません。
少なくとも、私が道場にいた時はそうでした。
あと、入門当初に言われた「間違っていいから気合い入れろ!」は、空手の稽古で自分がケガしないためにも凄く重要で、何かある度にこの言葉を思い出して気合いを入れなおしました。
それに、道場を離れた実社会でも、この教えは役立ちました。
今になってわかります。市原先生は、精神の剛体化こそがなにより重要だと考えていたのです。
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