C・W・ニコルさんのこと その4

 書き忘れてましたが、黒姫の合宿は、この一年前に稽古場所を間借りしていた日本空手協会の道場の方々との合同合宿でした。

 もしやと思ってましたが、間借りしていた道場の師範は、ニコルさんと旧知の間柄でした。日本空手協会の四谷時代を知ってるわけですから、館長とニコルさんと三人で、昔話に盛り上がります。


 夜の懇親会では、ネイティヴアメリカン(アメリカインディアン)のテント「ティピ」の中で焚火して酒を飲み交わします。泡盛まで出てきたのを覚えてます。

 この時、今回の合宿のきっかけになった出来事について、知ることができました。


 ニコルさんが六本木でテレビ局の面々と打ち合わせして別れた後、3人か4人か忘れましたが、路上で複数のイラン人に日本人女性が襲われていた場面に遭遇したそうで

「周りの日本人、誰も助けないから」

 ニコルさんが出張って立ち回りを演じたそうです。

 2人(3人?)を倒した後、最後の1人が大型ナイフ出してきたと。で、そのナイフ持つ手首を蹴りで払ってから、そいつの胸板に蹴り込んだそうです。

 ニコルさん曰く

「あの靴気に入ってたけど、パックリ切れてたからもう履けない」

 うむ、間違いなく当時CMやってたHAWKINSのゴツい靴だな。そうでなければニコルさんでもヤバかったと思う。

 とにかく、私はその話を聞いて、ニコルさんがやったのはいつも道場でやってるある動作だとすぐ分かりました。マネして大怪我したら大変なので詳細は控えますが、私個人は技の意味に大変納得して、それ以降はその技を気合入れて練習するようになりました。


 で、夜中の六本木の路上で大立ち回りすれば警察だって黙ってません。警察署にしょっぴかれていったニコルさんは、身元引き受け人にセンセイ・カナザワを指名したそうです。多忙な2人はなんとも奇妙な形で久しぶりに再会。その時に総本部道場の合宿をニコルさんのところでやれないか、という話になって、今回の黒姫合宿と相成ったのだそうです。


 この夜、私はニコルさんに1つ提案をしました。

 私はニコルさんの「Mooving Zen(『私のニッポン武者修行』の原題)」を日本の洋書専門店で取り寄せようとしたができなかった。今は日本にも外国人が多く、日本国内でも「Mooving Zen」の需要はあると思う。日本で原書の「Mooving Zen」は出せないか。

 例えばニコルさんが何冊も著者を出している講談社には、グループに講談社インターナショナルがある。そこで出すことはできないだろうか?


 ニコルさんは私の話にうなずいてくれました。こちらも数年来考えていた事を千載一遇のチャンスだったので口にしたわけですが、それが実現すればいいなぁと淡い期待を抱いているだけのレベルでありました。


「Mooving Zen」が講談社インターナショナルから出版されるのは、この8年後の2001年の事でした。もう腰を抜かすほど驚きましたよ。

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