C・W・ニコルさんのこと その2
1993年(平成5年)8月27日金曜日、この日は台風の接近に伴い、朝から記録的な豪雨でした。
東長崎の寮から駅までは歩いて3分ほどの距離でしたが、それでもスボンはびしょ濡れに。
上野駅に着いても横殴りの雨がホームにも容赦なく吹き込み、待ち合わせていた総本部の人たちもびしょ濡れになってました。
上野駅から高崎線の急行に乗って高崎へ向かう途中、私の実家の駅を通過します。実に感慨深い。
思えばこの路線に何度も何度も乗って、病院に、大学に、空手道場に向かっていたんだよな。
それが今や空手道場の仲間たちと一緒に、C・W・ニコルさんのところに向かっているんだから、状況は変われば変わるものだ。
「泪橋を逆に渡る」とはこの事かと、一人勝手に納得するのでありました。
高崎を過ぎると雨も止みました。横川で釜飯買ってワイワイ言いながら食べ、黒姫に着いた時はもはや台風一過の快晴の状況。
正直、黒姫から旅館にどう移動したか、旅館で何を食べたか、ほとんど記憶に無いんですね。
記憶にあるのは、旅館に着いたら早速全員集合してニコルさんを紹介されたこと。当時出されていた文庫本全冊読破していた私は、憧れの作家にして憧れの武道家を目の前にして、舞い上がりそうになる自分を抑えるのに必死でした。
ところが、
「ニコルさんはどうして黒姫に住んでるんですかあ?」
総本部の某道場生が無神経にこの質問をして、私は心の中で頭を抱えました。
「また! またこの質問! 今まで何度も答えてきました!『好きだから』です!」
ニコルさんは大声で叫ぶように答えます。その様子にその場の全員が大笑いしたのですが、ニコルさん、この質問をホントに何度もされて、その度に同じ返答して、この質問がイヤになってるんですよ。それは著書の中にもインタビュー記事にも書かれていること。
もうね、うちの道場生、私以外誰一人としてニコルさんの本読んでないの丸わかりで、ホントにホントに申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
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