白帯の日々のこと その5

 さて、入門して半年近くになりますと、道場内にも友人関係が生まれます。特に3月4月は入門者も多く、同じレベル同士で疑問点をぶつけたり教えあったり練習しあったりと、楽しくやってました。

 今思い出せるだけ列挙してみます。

 私が入門した翌週に入門したのがテレビ局勤務の橋本さん、道場では外国人以上の一番の長身でした。現在は首席師範である村上先生は当時「北の国から」の蛍ちゃんのファンで、橋本さんから中嶋朋子のサイン色紙をもらって喜んでたなあ。

 その次に入門したのが女子高生の愛ちゃん。目がまん丸で背が小さかったな。学校でピアノとバイオリンを習っているとかで、「お前は巻藁まきわらを突いちゃいかん!」と市原先生は本気で心配していた。

 その次に入門してきたのが眼鏡をかけた英会話の先生。この人は後に鈴木先生の奥さんになるのでした。

 色帯だと、冒頭でも登場したY。私が入門した時は緑帯で、すぐに青帯。彼とは公私ともに30年近い付き合いになります。

 もう一人の青帯は、大内さん。我々より20歳以上年上で、市原先生と同年代。ずんぐりとした体型で「裸の大将放浪記」の山下清そのままのイメージで、いつもニコニコしていた。でも福岡は田川の出身なので本来の気性は荒い方だったらしい。

 あとは出版の仕事でニューヨークから日本に来ていたジェシーさん。彼女もこの頃は青帯だった。国連の仕事で来ていたザックは茶帯だったかな? あと極真と掛け持ちで稽古にきていたシリア人、名前忘れちゃったなあ申し訳ない。

 黒帯だと沖縄出身の玉越さんが印象に残っている。眼鏡をかけた50代のオジサン。背は低いし動きは敏捷びんしょうではない。だけど身体ががっしりしていて、とにかく手足が硬い! 彼に突きや蹴りを受けられるとあざができるんじゃないかってくらいに痛い。だからこちらの攻撃が及び腰になるし、彼の受けを嫌がってこちらが突いた腕が無意識に横にれてしまう。彼とやるのは嫌だったなあ。痛いんだもん。

 あと黒帯だとインド人の兄弟がいた。新宿御苑前にヨガ道場を開いていて、インドでは自分たちの領地から出た事がない大金持ちだとか。

 それから黒帯は拓大出の大嶋さん。市原先生と同じく如何にも空手家という人。独特の気合の出し方が印象に残ってます。

 ああ、あとあのお寿司屋さんの息子! 中学生にもなってなんで女性たちと一緒にカーテンの中で着替えてるんだよ!

 彼とは就職して仕事で移動中、電車の中でばったり出会ったなあ。


 書いていて懐かしい四谷本部道場の時代ですが、でも1年しかいなかったんですよ、四谷には。

 国際松濤館総本部道場は四谷の鈴伝ビルから立退く事が決定していたからです。

 ところが、バブル崩壊の影響がここにも及んできたのですね。

 新しい道場が入る予定だったマンションの完成が遅れに遅れていたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る