白帯の日々のこと その1
3月になり、大学4年になる私は春休み期間中に就職活動を始めた。
平成3年(1991年)はバブルが弾けた後になるが、今と比べるとまだまだ就職活動はラクだった。3月から始めても早いくらいで、今の学生たちを思うと申し訳ないなあと感じる。
父親と一緒に買った就職活動用のスーツ(平成3年当時はまだリクルートスーツとは言わない。なんたってリクルート事件直後だから)を着て、慣れないネクタイ締めて、この前年に出たばかりの「面接の達人」を熟読しつつ、あちこちの企業説明会に顔を出した。
スーツ姿が板につくようにと、大学に行くだけの日もスーツを着るようにした。
実家から出て自立したい、早く独り立ちしたい、自分の足で歩いて遠くまで行きたい、そう考えていた私にとって、就職活動は楽しかった。一般社会は未知の世界で、そこで自分の知識がどれだけ通用するか試してみたかった。
50歳を越えた今、当時の気持ちを考えると、あれこそが若さだったんだなあと思う。実現困難な夢を見ながら無知故に怖いもの知らずで楽天的で……あれ? 今も大して変わらないかも?
余談だが、中谷彰宏氏のウィキペディアでは「面接の達人」が出たのは1991年となっている。だが、私の記憶ではその前年のはず。なぜなら1991年に買った版には、前年の読者ハガキによる面接体験談が記載されていたから。
この「面接の達人」が画期的だったのが、「大学で何をやってきたかとか、志望動機とか、どこの企業の面接官がどんな事を
お調子者で影響されやすい私は、全てを空手に
さぞや面接官たちは、この学生は道場で心身ともに
詐欺だなホント。
まあ、実体験をベースに、本で得た知識で水増ししたけど、嘘はついてないので。
さて、海千山千の面接官たちの前で弁舌ふるうくらいに、この頃は初めたばかりの空手が面白くて仕方ない状況でした。
もともと運動音痴だった私が、90分汗だくになって空手道場で稽古してる。それだけで「俺ってスゲー!」と嬉しくなってしまう。稽古後に「フッ、俺は地獄から生還してきた男だぜ」くらいの勘違いをしながら、当時四谷駅から一番近かった外堀通り沿いのセブンイレブン(現在は四谷コモレ1階にある)で牛乳1リットルを一気飲みして、帰宅する頃にはお腹壊しているというギャグみたいな事もやってました。バカですね。
でも、バカはバカなりに真面目に稽古してました。
なるほど、始めたばかりの時はガチガチで、だからすぐに疲れてしまっていた。稽古を続けていくうちに、疲労困憊の中で動作を続ける状況の中から、力の抜き方=インパクトの瞬間の効率的な力の入れ方を、頭でなく身体で理解できるようになっていきました。
とは言え、力を抜いても気を抜く訳にはいきません。
本部道場の先生たちは道場生の一人一人の進み具合をキッチリ把握していて、無理にならない
とにかく感心してしまうのが、私みたいな不器用な運動音痴ですら混乱しないように、注意する箇所を一度に複数指摘しないでいてくれた事でした。
《カナザワ先生は、道場に着くと、私にまず形を教えたが、その中で一日に二つ以上の点を矯正することは絶対なく、しかも一つずつ別々になおし、同時にはしなかった。》
C・W・ニコル著「私のニッポン武者修行」より
伝説のセンセイ・カナザワは忙しく世界を飛び回っていて、本部道場に通っているのに会える事がありませんでしたが、その指導方針は全ての先生たちに根付いているのがわかって嬉しくなってくる。
さて、面白くて仕方なくなった空手の稽古ですが、それはもう順調に市原先生からは怒られてまして
「指の先まで気合入れろ!」
「間違ってもいいから気合入れろ!」
と、一度に一つずつ怒鳴られておりました、ハイ。
稽古始めて数カ月過ぎますと、覚えた事の復習の必要性を痛感してきます。
で、買うわけですね、教本を。
「空手 六週間で強くなる!!」
「空手 型全集(上)」
「空手 組手全集」
この3冊を神田神保町の書泉グランデで購入しました。「空手 六週間で強くなる!!」は基本の動作が豊富な図版で丁寧に説明されていて、入門したての人にはオススメです。この本、買った時の書泉グランデのカバーが今もそのまま付いてます。
ホント、これ一冊でも白帯には充分なんですが、「空手 型全集(上)」と「空手 組手全集」も購入する必要が私にはありました。
昇級審査があるからです。
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