サウナは熱いけど気持ちよく汗がかける

おじさんはサウナにそんな良いイメージは持っていなかった。熱いだけだし、オッサンだらけで臭そうだし、運動部の部室っぽいし、我慢大会の会場みたいだし、汗まみれで汚そうだし、そもそも裸の集団が室内で皆で座ってるってどういうことですか。わざわざそんなところに行く意味が分からない、というボロクソのイメージだったのだ。


それでも一定のサウナ好きが存在することは知っていた。サウナはヤバいという話もちらほら耳にする。何故なのか。おじさんはとりあえず自分で体験してみるのが好きな性質なので、誰もいない時を見計らって興味本位で入ってみた。そして納得したのだ。これは思っていたよりもヤバい、と。


サウナ室の中の温度は、だいたい70℃~90℃あたりの所が多い。でも、考えてもみて欲しい。湯船であれば42℃くらいでもう「熱い」。熱くて入ってられないし、触っただけで無理という人もいるだろう。だが、サウナ室はその倍ほどの温度なのだ。そんな温度のなか、おじさんたちは黙々と蒸されている。なぜ入っていられるのか。


それは、「お湯があるか無いか」の差が大きい。お湯(水)というのは、金属以外の物質としては、熱伝導率がとても良い。接触している物へ熱を加えたり、奪ったりしやすいのだ。それに対して、空気、とくに日本のサウナのような湿度の低い空気というのは、熱伝導率は高くない。結果として、80℃の室内であっても、瞬間的に「熱い!」と拒絶するほどの熱は感じないし伝わらない。ヒトの体にゆっくりゆっくりと熱が伝わり、サウナ室に入っていられるというわけなのだ。


ちなみに、料理をするときの手法の一つに「低温調理法」なるものがある。食材を真空パックに入れ、一定の温度に保った水で茹でる手法だ。こうすることで、「焼き過ぎ」を防いで最適な温度に食材を持ってこようというわけだ。これも水の熱伝導率の良さを利用している。直接茹でずに真空パックに入れるのは、水中に食材のうまみが溶け出すのを防ぐと同時に、空気を抜き、熱伝導率の良い水と接する面を増やして効率よく熱を伝えたいという意図がある。


さて、話をサウナに戻そう。サウナ室に入ると徐々に体温が上がり、結果として血流がめっちゃ良くなる。すると、体温を調節しようとする交感神経が働き、汗をかく。人にもよるが、だいたい5~6分も入っていれば汗をかき始め、10分以上もすれば、流れ落ちるほどになるだろう。この汗をかく、というのがまず気持ちいいのだ。普段汗をかき慣れていない人や、寒すぎて汗をかかない季節であるほど、汗腺から汗が出る感覚に心地よさを覚えるだろう。


ちなみに、ほとんどのサウナ室は、ひな壇のような段が設えてある。これは、座って過ごせるようにするため、というのもあるが、座る位置によって温度を調整できるようにするため、という理由が大きい。


サウナ室の多くは、サウナストーブ&サウナストーンを使って室内の空気を温めるが、温められた空気は、「熱い状態の物ほど上に行く」仕組みを持っている。つまり、同じサウナ室内でも下はそれほど温度は高くなく、上に行くほど温度が高いというわけだ。


このため、サウナ室内に温度に差が産まれる。下段は低く、上段は高い。サウナにまだ慣れていない方や、急に熱くなるのが苦手という方は下段に腰掛けてゆっくりと温まり、てっとりばやく汗をかきたいという方は上段に座れば良い。


中には「ひな壇は温度を調整するための段などではない。最上段という天国へ向かうための階段ステアウェイ・トゥ・ヘヴンだ」という温度ジャンキーもいる。そういったタイプは、天井の低いサウナ室を好む。天井が高いと、一番暖かい空気には届かないのだ。


自分なりのペースで存分に汗をかくことを堪能したら、サウナ室を後にしよう。長居は禁物だ。定期的に汗をかくことで、汗腺も鍛えられ、毛穴の汚れも落とされてきれいになるというもの。なんでも、おじさんには避けなられない加齢臭というフレーバーも軽減されるそうな。ゆかねば。


さて、ポカポカになったおじさんには次の工程が待っている。そう、水風呂だ。サウナの醍醐味は水風呂にあるという人も多い。かく言うおじさんも水風呂が大好きだ。


水風呂については、また次の機会に。

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