負け犬アベンジャーズ その2
ショッピングモール「白虎」の上空を飛ぶアイネに向かって、真っ赤に燃える熱の塊が飛来してきた。
あいさつ代わりの一撃を、アイネは虹天剣で払いのけ、空には大輪の花日が咲いた。
「おおっと、来たみたいね。エル、用意はいい?」
「万全だ、すべてそろっている。この後の動きも間違いなく成功するだろう」
「よろしい。虹の翼の天使が告げる! すべての混沌を下し、秩序への勝利をもたらせ。人々よ、旗の下に集え」
真名開放――――秩序の化身にして善の導き手が高らかに宣言する。
集いし人々は、自分たちを散々虐げ希望を奪ってきた「悪」を憎み、天使の名のもとに誓いの歓声を挙げた。
主はラッパを轟かせ、決して退却せぬと告げた
主は審判の御座の前で、人々を心をふるいにかける
おお、速やかに応えよ、わが魂! 歓喜せよ、わが脚!
我らの天使は進み続ける!
「栄光あれ、栄光あれ、称えよ!」茜が叫ぶ。
「栄光あれ、栄光あれ、称えよ!」葵が叫ぶ。
「栄光あれ、栄光あれ、称えよ!」アイネの声が津波のようにコロニー全体に響いた。
『我らの天使は進み続ける!』
おびえるだけだった難民は、アイネたちが持ち込んだ物資や武器を手に取り、天に掲げている。
今や彼らは男女関係なく、アイネのために戦う尖兵と化した。
もし見る者が見たら、完全に質の悪い宗教による洗脳でしかない。
だが、難民たちはアイネにすがるしかなかった。
カンパニーは彼らをこのエリアに閉じ込めたまま、救援も物資も送らず、ずっと放置し続けてきた。コロニーマスターも必死になって救う努力をしていたが、問題の大きさは彼の大きな両手ですら救うには不足だったのだ。
一時的に空白地帯になった白虎の周辺に、再び大地を埋め尽くす無数のアンデットの集団が押し寄せてきた。
しかし、アンデットたちが白虎から100メートルのところまで近づいた時、彼らの足が急激に鈍る。
いたぶられるだけだった難民が、近づきがたいオーラを放っている。それだけでなく、アンデットたちは圧倒的な威風に押され、本能的に屈服させられたかのような衝撃を受けた。
そこに白い羽根の嵐と、虹天剣による一斉照射が行われる。
白と虹の暴風は、瞬く間に10万単位の不死者を消し飛ばした。
廃墟で埋め尽くされた地平線が開けた。
『栄光あれ、栄光あれ、称えよ! 栄光あれ、栄光あれ、称えよ! 栄光あれ、栄光あれ、称えよ! 我らの天使は進み続ける!』
そして――――屈強な神兵と化した難民たちが、一糸乱れず列を作り、行進を始めた。コロニー中心部、悪魔樹に向かって。
さて、この動きに悪魔樹の上にいる屍神オグンは、やや面倒くさそうな顔をした。
正直彼にとって「
一般人を洗脳して兵士とし、ただひたすら一直線にアカシック目指して進ませている。そしてそれを率いる天使はアンデット特攻の強力な攻撃を持っているうえに、その実力もオグンに匹敵するだろう。
彼らがそのままここに突っ込んでくれば、1時間もしないうちに悪魔樹の根元は蹂躙され、自らを守る手段のないアカシックは倒される。
アカシックが呪文「アルファベット」を唱え終わるまであと60時間以上必要になるので、このままでは戦略的勝利戦術的敗北である。
が、今ここには屍神オグンがいる。
敵がよほどの奇策を使わない限り、ここに向かってくる難民たちは犬死することが確実であり、天使とその周りにいるおまけとの戦いが実質的な勝敗を決めることになるだろう。彼にはその道筋がはっきり見えるからこそ――――むかつくのだ。
なぜ奴らは、わざわざ洗脳させた手下を無駄に散らせようとするのか。
不可解に思いながらも、オグンは各拠点を包囲しているアンデットの大群たちに、悪魔樹に集まり白虎を目指すように指示を出した。
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