18話 お昼
♦︎部活動行進
結果だけを言ってしまうと、20mシャトルランはナラが最後まで乗り154くらいまで走って見事に一位を飾った。そして赤組には154点が入るわけです。
白組は121点で30点の開きだった。
この採点方式には少しばかり僕は不満がある。一位の人の得点が入れられるけど、その他の人の頑張った分は点数として入らないんだ。他の子も頑張ったのに一番の人の分しか点数が貰えないのは不公平だろう…
僕的には途中でリタイアした人の回数をバインダーに紙がなんか挟んでそこに記録するのがいいと思う。その記録を全部出して、点数÷人数(赤)(白)とすれば皆平等に審議することにもなる。僕的にはね。
その後に、3年のリレーがあり2年の僕らとはこれまた一段と違ったバトンパスなどを見せられた。3年リレーは赤組1位だった。
その後に、まさかの伝統の遊び(伝統かは知らないけど)ドッヂボールがあった。
一年生の競技だ。これは残念ながら赤組負けてしまったけれど白熱した戦いだったと思う。僕もやってみたいと思ったほどだ。
そして、プログラムにはこの後は…お昼とある。
「ふむ…僕はどうすればいいんだ」
殆どの人は身内の人と食べるだろう。だけど僕のとこは家族すら来てない。
現在、部活動行進をしていてテントの中で待ちぼうけている僕はもうすぐ来るお昼について頭を悩ましていた。
(
部活に入ってる知り合いは皆、仲がいい奴や一人で食べることだろう。
家族もいない、一緒に食べる友達もいない、ご飯もない。まず前提としてお昼を僕は持っていない。作るのめんどいし。
「なるようになるかな」
日光はこちらの気も知らず今日も呑気に燃えている。もう少しで真上に来る。
そしたらお昼だ。プログラム用紙には部活動行進の事は記されてないけど、お昼の欄を見ると12:20分から、1:00までのブレイクタイム。
僕以外にも、テントで見ている人もいるけどいずれも必ず二人以上で誰かしらと喋っているから暇つぶしにはいいだろうぁと思う。
話す相手がいないこちらは、ただただ行進を見ているしかできない。
3年生のテントが一番内側にあって、その左に2年、またその左に1年の並びで3年生のテントの方を見ると、やっぱり男3人で笑っていた。
挙げられていない女子はテントが別なんだ。男子のテントとはトラックを挟んで対極の位置にある。まぁ、向かい合う形。
「そろそろ終わりそうだし、どこかで暇を潰そう」
そう決めて、テントから誰よりも早く出た。
♦︎お昼 ナラ
部活動行進が終わって、お昼の時間帯になった。私の家族は運動会に来てるからそこに向かう予定。
「ナラ、一緒に食べない?」
クラスの女子からそう聞かれて「ごめーん。ちょっと他の子と食べるから」と言ったらすんなり「そっかー、その子も呼んできていいからね」と言って他の子と一緒にどこかに行ってしまった。
「ナラ、一人?オレ達と食わない?」
「大丈夫〜♪ありがとね〜」
「えー、いいから食べようぜ」
「私、家族と食べる予定なんだ、だからごめんね」
そう言うと、素直に「そっか、んじゃな」と言って彼らも何処かに行ってしまう。
その後も、次々と誘われたけど全部「別の人と食べるから大丈夫〜」と言って追い返してしまった。後で、謝らなきゃ。
さっきから、色んな人と会うけどお目当ての人が全く見つからない。
おでこに手を添えて、腰を前屈みにする。目を凝らして周りをよく見る。んーとね確か………わからないから命名はお探しポーズでいいや♪
そのポーズで辺りを見回しても、目的の人物らしき人物は見当たらない。
「どこ行ったんだろう?…」
人差し指の第二関節辺りを下唇に押し当てて考えるポーズ!
探している人である柚和が悩んでる時によくするポーズ。見てたら私も癖になっていてほんの少し驚いた。
「一旦、お母さんのとこに行こ、ご飯取りに行かなきゃ」
自分の家族がいるところまで、ナラは走った。
♦︎お昼
「おつかれー♪皆うちんとこで食べよー」
「はーい」
と言う中で私は言わなかった。
「私は、兄を探して一緒に食べるので、すみませーん」
「そうなの?わかった。またね莉奈」
「はーい、また」
と言って、私はその場を離れてテントに向かった。
テントに来た私はリュックの中から簡易の保冷バッグを取り出してそこから作ってきた二人分のお弁当を取りだして中を確認した。
「うん!悪くなってない。よし」
保冷バッグにしまって四つの保冷剤の真ん中に置く。
それを持って私は近辺を見渡した。
「ここら辺にいるのかな…」
そう言って柚和を探し始めた。
♦︎お昼
いやーすごかったすごかった!
運動会に久しぶりに見た、わたしは興奮してた。
「女子のシャトルラン一位の人すごかった〜、綱引きもすごい楽しそう!最初のリレーなんて柚和がすごかった!」
一人、お弁当を食べているわたしは花壇のレンガの上でまったりしていた。
「午後はもっと凄いのかな〜!柚和に感謝だね」
黙々とそのあとは美味しそうに自分で作ってきたお弁当を食べた。
♦︎お昼
「おし!お前らどこで食うの?」
俺は、仲のいいダチ全員にそう聞いた。
「行く行くー!宗のとこでスマホゲーやりたい」「お前家の姉ちゃんに会いたい」
「多い人数で食べたいからな」などと周りの男子は騒ぎ立てる。
「おし!んじゃ来い!」
俺はまとめて全員を俺の家族がいるところに連れて行った。
♦︎お昼
「取り敢えず午前おつかれさまー」
同じ部活の人達と、午前中の競技のお疲れの乾杯。もちろんスポドリ。
「水泳部の俺としては中山!お前の活躍を皆んな微笑ましげに見ていたぞ!」
「ちょ、なんですか!?微笑ましげにって!まるで可愛いみたいに…」
「あー!可愛かったぞ」
「ハー!?」
と言いながら、唐揚げを口に運んだ。今ならいくらでも胃の中入りそうだ。
♦︎お昼
皆んなが楽しんでお昼を食べている頃。運動会中は立ち入り禁止になっている校舎内に入っていた。
「いるとバレると怒られるからバレないところにいるべきかな」
そう言って、自分の教室を通り過ぎて立入禁止になっている屋上の階段を仕切っている柵を飛び越えて階段を上っていく。
(多分、解放はされてない筈なんだよね…)
屋上に入るドアの前まできて、一応ドアノブを回してみる。
(やっぱ開かないよね。鍵付いてるし。職員室いけば鍵あるけどそれじゃ終わり)
屋上なら、誰にも見つからないで静かにできると思ったんだだけどなぁ…と心の中で呟いて仕方ないと一度戻る。でも悔しいので自教室に足を運ぶ。
僕は、自教室から安全ピンを持ってきてピッキングしてやろうと思った。簡単なディスクシリンダー型だったのが唯一の幸いで10秒くらいであけてやった。針金ならもっと早くあけられたかもしれないけど、開ける事が目的で急いでなかったから頭では別にいいや割り切っていた。
「ふー。もう悪人だな。僕」
扉をちゃんと閉める。
屋上に来て思った事は
「寝れそう」
それだけだった。自殺なんかは全く頭に浮かばない。死にたいわけでもないから。
ただ、そう。本当にここでゆっくりしたかった。
(これだけなら許されるよね)
僕は、それから眠気を誘う風に意識を攫われてお昼寝に入った。
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