第11話

「まだ終わりじゃないわッ!!」


 当然、迫り来る梟はその一体だけではない。闇夜を覆い尽くす更なる黒が無数、高速移動で迫っている。


 もう車まであともう少し。

 俺たちは走って、車に飛び乗った。大昔からあるホラー映画の定番のようにエンジンが掛からないこともない。大きな唸りを上げて、発車しようとしたその時。車体が揺れた。背後を見ると、梟が二本の短剣を車体に突き刺している。


「おい、どうして進まないんだッ!?」


「背後よッ!!」


 その足は確かにペダルを踏んでいた。つまりその梟がその刃と尋常じゃない脚力で車を止めているのだ。虚しく空回りするエンジン音が響き渡る。


「くっ!!」


「──待て、俺がやる」


 後頭部座席に突き出す銃を奪い取る。彼女が何か喚いたような気がするがもう俺の耳にその言葉は届いていない。


 この女が何者なのかまだ分からないが、なるほど。良い銃を使ってやがる。この時代になってもその銃と言う存在は、そう大して変わらなかった。ずしっとくる重さ。しっくりくる銃把グリップの握り。大口径は良い。ボディアーマーすら貫いてくれる。安全装置セーフティは当然ながら外れている。俺は引き金トリガーを二回、引いた。


 音が鳴る。大きな音だ。しかしその音はもう慣れたものだった。


 そして銃口マズルから吐き出された銃弾は、ゆっくりと車の背面ガラスを割り破る。そして梟のタクティカルグラスをも破壊する。そしてもう一発は、その銃弾の背を追った。

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