第5話

 手を差し出す姿が別人へと変化していた。防護服で全身を覆った何者か。そしてその世界は単なる赤い世界になっていたわけではない。天井がそこにはあった。薄汚れたコンクリート製の天井。


 瞬きをすると世界は変わる。


 綺麗な女に、どこまでも続くような青い空の上。……クソッ、頭痛がしやがる。どうなってる。俺の頭の中は、どうなってる。


「顔色が優れないようですが、本当に大丈夫ですか?」


「あ、ああ……大丈夫だ」


「そうですか……? ではこちらを」


 ぐるぐる回るように移り変わる世界。気が狂いそうになりながらも俺は、それを受け取った。霞む視界の中、それを確かめる。賞金……いや銃。これも変わるのか……。まるで別の人間の記憶を見ているようだ。


「それでは、皆様!! もう一度大きな拍手を!!」


 弾ける拍手は、銃声へと切り替わる。数え切れないほどの銃弾が俺の身体を通過していくような気分に陥る。


 頭が、割れるようだ。く、くそ、足が……。


 その時、視界の先にあった青と赤の世界が引いていく。そうすると俺の頭痛は引いていった。


「お帰りはあちらです」


 全身を伝う気持ち悪さで俺は我に帰る。……汗だ。大量の汗が服を濡らしている。目の前にいるのはあの女。頭を下げて手を左方向に差し出している。

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