第2話

◼️


「本当にこれを潜るのか?」


「はい、目的地はその先です」


 流暢な言葉遣いでその機械は、俺を急かす。正直、この手の機械は信用ならない。一瞬で別の場所に移動するなんて怖いの一言に尽きる。目の前の薄桃色の扉。俺がこれを潜ることになったのは、上級市民のパーティにお呼ばれしたからだ。遥か上空で行われる祝賀会。何の祝賀会かって言うと、この国に仇なすテロリストが捕まったから。それを捕まえたのが俺だ。別にそれは偶然捕まえたとかそういうわけではない。それが俺の職業だからだ。


「……へいへい、分かったよ」


「そのまま直進です」


 声に従って、扉の取っ手に手を掛ける。無機質な空間にぽつんとあるその扉は、なんだか俺に空虚な気持ちを与えた。その扉を開けると向こうの景色がもう既に見えている……はずだった。


「なんだ、これ……」


 その先は真っ暗。黒く塗り潰されているのかもしれないし、そうでないかもしれない。


「これが本当にパーティ会場なのか?」


「はい、目的地は正常です」


 確かに、照明を落とした中で主役が登場するパーティも無くはない。だが、よく目を凝らしてもそこになにかがあるとは思えない。

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