ドこデもドアがこの世界で完成しました

悠希希

第1話

「さあ、行くか」


 俺は、目の前にある扉を眺める。薄桃色の扉だ。この扉は、どこにでも行くことが出来る扉。正式名称は、dimension空間の destination目的地を definition定義する だ。


 通称『ドこデもドア』と呼ばれている。


 全く誰が考えたのか知らないが、上手いこと考えるものだ。……ああ、少し待ってくれ。俺がこの扉に潜るに至った経緯を皆には、知ってもらわなければならない。なあに、そんな時間は取らせないさ。


 まずこの世界の現状だ。

 世界に溢れていた仕事の山は、機械たちが全て片付けるようになった。人間たちに残されたのは、機械の面倒を見ること。あとは簡単な肉体労働・・・・・・のみ。それだけで十分やっていけるようになった。だがどうしても人は比べたがる。お偉い先生は機械に任せて、人々に位を作った。それは上級市民、中級市民、下級市民。と言っても、贅沢を言わなければ下級市民でも十分暮らしていける。貧困は、ほとんど無くなったと言っても良いだろう。昔は、暮らすためだけに色んな犠牲を払ったなんて聞くが今は全く考えられない。ちなみに俺は、中級市民だ。


 その『ドこデもドア』は、一度使うのにとんでもないエネルギーが必要らしく上級市民のみ使うことを許されている。


 ああ、言いたいことは分かる。中級市民の俺がなぜそれを潜ることになったかと言うと、数日前にこの扉を潜ったからだ──。

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