2-3

 結構な人数が集まった。基本的にブリテンの騎士ってのは隙あらば酒を飲んで騒ぎたがる人種だ。

ちょっとした理由と、酒樽と、あと料理があれば最高だ。

 ……ということで集まったバカどもがわけも分からず買ってきた魚をひたすらファイと二人で捌いている。連中は中庭でたいた火の周りで酒を飲みながら騒いでる。いいご身分だあいつら。

「これはちょっとした量だぞ」

「楽しいですね!」

「残り3桁じゃなけりゃな」

会話する間にも手早く腹を割いてワタを取り除き、ファイに投げる。投げられたものをファイは串に刺し、火の周りに刺していく。それをそれぞれで取って食う。

「カイチ、お前ほかの奴隷連中はどうしたんだよ」

「魚嫌いな人が多くてな。捌くのと匂いが」

「おい、あそこでふらついてんのお前の」

「おおっと先生だ、挨拶してくる」

「この野郎……」


 漏れ聞こえてきた噂によると、どこぞの王族がお忍びでやってきているらしい。次男坊が多い王族関係なんてそこらじゅうにいるんだから誰が来てもおかしくないだろ、と鼻で笑っておいた。

「本物が来たらどうします?」

「本物ってなんだよ。皆本物の王族関係だぞ。俺も含め」

「そういうことではなく……」

ふと作業の手を止め、在庫を見る。あと数匹捌いたらちょうど半分くらいだし、俺らも食いに行こう。と、視線を手元に落とす一瞬、誰かに見られている気がした。気のせいだろう。もしくはもう焼いてるのが尽きたか。……生焼け食ってる馬鹿はいないよな?


「気付いた?」

「さすがですね」

「ご挨拶に行こうかしら」

「ここまで来られたならもう構わないでしょう」

「行くぞ」

「はい」


魚の盛られたザルを手に持ち、ファイと部屋を出る。俺が飲む分の酒はカイチに確保させたが、あいつ俺の分まで飲んでないだろうな……


「おっ、魚だ魚だ」

「よう捌くなお前、ありがたい」

「生魚だ!」

生で食うな馬鹿。

手早く魚を火の周りに刺しその前に座ると、酒を手にしたカイチがやってきた。

「ほらよ」

「ありがとう、魚はまだ食うなよ。生だぞ」

「わかってるって。生で食った連中はもう便所で倒れてる」

「アウトブレイクしてんじゃねぇか」

「まあ大丈夫だろう。虫下しもガメてるし。それよりお前に客だ、お前直系だったのな」

「まあ直系は直系だが傍流すれすれの第134位王位継承者だぞ、誰だよこんなとこまで」

「私です」


……誰?

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