1-2
夢を見た。
一人の女が燃え盛る大木の前でかわいそうにと呟き続ける。
大木が燃え尽きることはない。
「夢を見たか?」
目を覚ますと白い女とファイが見えた。次に浮いている篭だ。その篭には俺達が乗っている。
「あ、ああ……」
「私に影響されたらしい。ゆっくり休んでくださいね」
空を飛ぶ感覚はとてもじゃないが気持ちの悪いものだった。そもそも地に足がついていないのが気色悪い。
ファイは既に慣れて白いのと話している。何を話したか後で聞いておこう。
「簡単な癒やしの術と自衛の術を教えておりました。私は力で自分を守れますが、彼はそうでもなさそうなので」
「占いでもしたか?」
「私は知っているだけです」
「何を?」
「すべてを」
「……ネイピア!」
次に目が覚めたときは既に陸の上だった。
……最も高い山の上、息もし辛い上に空を飛ぶ機械がそこらじゅうを飛んでいる場所を陸と呼ぶのなら、だが。
巫女にはしばらく休むようにと、これから十分な寝床と食事が与えられ、3日後に神に謁見を許されることが伝えられた。
「ネイピア、神様ってどんな人かな」
「どうせろくなもんじゃないさ。魔法使いってんだろ」
魔法とかいうようわからんものを使い、一人の人間をモノ扱いで自分の手元まで呼び寄せるやつだ。鳳凰だかなんだか知らんが、ファイも帰りたがっているし、絶対ここから出て帰るぞ。
翌日、許可されている範囲で城の中を歩き回ってみた。結果、次のことがわかった。
この城は硬い扉と魔法にて施錠されていて、非常時には戦闘に加わらない人々を匿うためのスペースが地下にある。城の外には城壁が存在し、城壁と城は神さまとやらの魔法で守られているから、
「絶対に破れることはないと。本当か?」
考えつつ歩いていると、例の如く何かが外でぶつかる音がし、城内が揺れる。壁や天井が微かに光り、そして内には何事もない。埃一つ落ちることも、揺れたことで何か物が落ちることもない。魔法万歳だな。
ご飯を食べてからずっとベッドで寝ていたらしいファイに見たものを教えてやる。
しきりに感心したような声を出し、部屋の外を見てくる、と言って出て行った。まあ一人で行かせても怪我をするようなことはないだろう。
入れ違いに巫女が入ってくる。
「ファイはどうしました?」
「城内を探検してるよ。お得意の占いで探さないのか?」
「些事であればあるほど精度が落ちますので」
そうかよ、と一言やって壁の方を向いて横になる。
疲れていたのか、すぐに深く眠り、夢を見た。
大木の洞の中には決して燃え尽きることのない火があり、それを抱きしめながら巫女は何かを呟き続けていた。
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