第013話 準備

 ……呪い。 僕はベッドに入ってそのことばかり考えていた。

 加護の力は実感できている。しかし、呪いの効果は実感できていない。


【お前を愛する者の人間性を狂わせる】


  この言い方では自分に効果が無い。

  あるとしたら自分を愛してくれる人が狂ってしまう事になる。

  しかも人間性が狂うとはどういう意味で捉えるべきなのだろうか?


  その点、カヨの呪いは分かりやすい。

  幸運、不幸の基準は置いておいて、いい事があったら悪い事が起きる。そんな感じだ。

  もし本当に呪いでさっきみたいな看板が飛んでくる程度なら、危ないながらも対処ができると思う。

  逆に不幸が起きれば幸運が訪れるのだろうか? いや、それでは呪いじゃないか……

  幸運量保存の法則みたいにはいかないか。

 

  そんな事を悶々と考えながら眠りについた。



 …………


 


  翌日、僕とカヨの二人は迷宮探索の準備をするためにフリッツのパーティーとギルドに集まっていた。

 

「まずは紹介も兼ねて能力を確認したい。そのあとジンとカヨの役割を決めようと思う」


  フリッツはそういうとセイナがメモ紙を取り出した。

  それを確認したフリッツは自分の能力を紹介した。


「基本的には剣士として前衛を張るが、防御的な補助魔法、治癒と解毒も下級魔法が使える。回数は4回程度だ」


 次にニールが話す。


「俺は斥候として待ち伏せの回避や、弓で敵への先制をやってる。魔法は補助がメインでフリッツよりは得意だ」

「ニールさんは……どんな魔法を?」

「ニールでいいよ」


  かしこまった僕にニールは笑顔で返した。


「周囲を照らしたり目潰しの光魔法や音を消して忍び寄る魔法のスニークが得意だな」

「なるほど」


 最後にセイナが口を開いた。


「私は主に回復を担当していました。上級の治癒、解毒、目潰しや沈黙をレジストする魔法なら一通り使えます」


  ニコりと優しい笑顔を二人に向けた。

  僕は思う、これが本当の癒し系なのだと。

  自分で殴りつけて治癒魔法使ってる奴とは違うと。


「僕は剣士見習いです。魔法は下級の攻撃魔法と治癒魔法くらいで……不得意です」

「ジン、見習いって事は無いだろう」


 フリッツは苦笑いしながらジンに言った。


「国では訓練ばかりで……実戦はほとんどありません。だから見習いです」

「じゃあフリッツも見習いって事にしとけよ」


  ニールがフリッツを茶化している。仲が良さそうだ。

  最後にカヨが自己紹介をした。


「私は……大体の魔法が使えるわ」

「大体とは……例えばどの程度?」


  フリッツは大雑把過ぎる説明に疑問を投げた。

  僕はカヨに耳打ちする。


「カヨ、古代魔法とか失伝してるの多いらしいから使えるとか言うなよ」

「分かってるわよ」


  コソコソと話しているとセイナが悲しそうな顔をした。


「パーティを組んだばかりの私たちは、まだ信頼関係を築けていません。ですが能力を隠されると命に関わりますので……」


  僕もカヨもちょっといたたまれない気持ちになった。


「そ、そうね。攻撃魔法と治癒魔法は上級、自己強化の補助魔法と結界魔法が得意ね」

「治癒の上級も使えるのか!?」

「ええ、まあ、嗜む程度には使えるわ」


 フリッツとニールは驚きながら聞き返す。

 謎の返事を返すカヨ。

 何だよ嗜むって。


「それは凄いな……ちなみに上級魔法は何回くらい使える?」

「昨日の訓練で撃った程度なら……20回は使えると思うわ」


  メモを取っていたセイナはペンをポロリと落とした。


「昨日撃ったあの威力の上級魔法を20回?」


 三人があまりにも驚いた表情をしている。

 僕はマズイと思いすかさずフォローした。


「カヨは見栄っ張りだなぁ。前は5回撃ったらへばってたじゃ無いか!」


  話合わせろよと言った風に肘で小突く。

 

「そ、そうね。冗談よ冗談。最近は6回位なら撃てるかしら? ホホホ」


 フリッツは少し怒った感じでカヨに言いよった。


「この場でそういう冗談はやめてもらいたい。治癒魔法にしても、本当に上級が使えるのか見せてもらえないだろうか?」


  カヨは少し考えてため息をつき、僕の肩を左手でガッシリ掴む。


「今、あなたが私を小突いた時、肘が胸に当たってたわ」

「え?」


  突然のイチャモン。

  僕は顔面をぶん殴られた。


  突然の行動に驚く三人、鼻血を出すワタクシ。

 

「癒しの風!命の水!魂の灯火!癒しを求め傷つく者よ!慈悲と慈愛の声を聞け!静寂なる安寧をここに! ハイヒーリング!」


  すかさずカヨは上級の治癒魔法を使って怪我を治した。

 

 僕はあまりの理不尽さに言葉を失っている。

 殴るなら疑ったフリッツ殴れよ。


「これで信じてもらえたかしら?」

「あ、ああ。しかしまだ上級魔法を5回も使えるとは……」

「分かったわ、じゃあ外に出ましょう」

「フリッツ!」


  立ち上がるカヨを制止するように、セイナが叫んだ。


「昨日の魔法を見ていれば分かるでしょう? カヨは魔力高さでも制御でも一流の魔法使いよ。今の治癒魔法だって発動が恐ろしく早かったわ」

「た、確かに」

「疑ってごめんなさいね、カヨ」


  カヨは再び席に着く。

  今度はフリッツが立ち上がり、カヨに頭を下げた。


「疑ってすまない」

「まあ許してやってくれよ。フリッツは真面目で堅物だからなぁ。そこがいいところなんだけどさ」


  ニールがフォローする。

  カヨは首を横に振って笑った。


「謝るほどの事じゃ無いわ。確認は必要な事よ」

「そう言ってもらえると助かる」


  一方、誰にも謝られず実験台にされ、殴られ損の僕は泣きたい気分になっていた。


「さて、そうなると剣も使えるカヨは何処にいてもいいな」

「まあ基本的には後衛でいいんじゃないか? いざという時はセイナを守って貰おう」

「そうだな、戦闘時はニールとカヨでセイナの護衛兼遠距離火力を出してもらい、俺とジンは前線を張ろう」


 ニールは僕に質問してきた。


「ジンは斥候の経験があるか?」

「いえ、無いです」

「じゃあ探索時は俺の後ろでフォローしてくれ。斥候のやり方を教えるよ」

「分かりました」


  セイナはメモを書き終え、本を閉じた。


「このメンツなら北壁の迷宮に行けそうですね」

「ああ、そうだな。中層位なら稼ぎもいいし問題なさそうだ」

「じゃあ明日は北壁の迷宮だな」


  フリッツはカヨとジンに向き直り説明を始めた。


「明日行く迷宮はここから馬車で3時間ほどの場所にある北壁の迷宮という場所だ。上層、中層、下層、最下層の4層構造になっている。その中層で魔物を倒して魔石を集める方針だ」

「分かりました」

「もし中層が楽過ぎるなら下層まで降りようと思う、中層までで出てくるモンスターは……」


  モンスターの説明を受けたものの、ジンもカヨもピンときてない。

  ニールがフリッツの話を遮った。


「フリッツ、こう言うのは口で説明してもわかんねーと思うぜ」

「確かにそうだな。何よりこの二人は俺よりも強いからな」

「その通り! だからさっさと準備資材を買って飯にしようぜ」


  フリッツとセイナはニールの提案に頷いて立ち上がった。


「じゃあ俺は受付で依頼の受注と明日の馬車の予約をしてくる。みんなは資材を買ってきてくれ」

「分かった」


  フリッツと別れてニール、セイナ、ジン、カヨは工房、雑貨屋、魔道具屋と周り必要な物を買い出す。


「まあ買い物と言ってもロープや薬品、二人のランタン位だけどな」

「大体は揃ってますからね。北壁の迷宮は特殊な装備も必要ありませんから」

「あ、そうだジン、お前は弓を使えるか?」


  僕は首を横に振った。

  弓矢は現代社会で完全に銃に取って代わられている。狩りでも戦争でも出番は無く、武芸かスポーツでしか存在しない。


「先に発見して弓で先制すればリスクを減らせるからな。敵が弱い上層で練習しよう」


  そう言ってニールは安物のショートボウを購入した。


「いいんですか?」

「パーティーだろ? 構わないって」

「ニールはジンに斥候を教えて楽をしたいんですよ」


  セイナはニールを茶化して笑っていた。

 

「いやいや、俺は真面目にだな……」

「ふふ、分かってますよ。フリッツは不器用でそういう事できませんからね」


  何にせよ実地研修をやってくれるならありがたい。

 僕らは経験不足もいいところだ。

 

  カヨは僕に声をかけた。


「いい人達だね」

「ああ、殴りつけても治癒魔法でチャラになると思ってる誰かとは違うね」

「……足りなかったかしら?」


  彼女は笑顔で拳を作った。


「満ち足りてます。もう結構です!」


  僕は後退り距離を取った。

  そんなやり取り見てセイナは笑っていた。


「こっちは終わったぞ」


 後ろからフリッツが声をかけてきた。

 ギルドでの仕事は終わったようだ。


「そうだな、もう買うものは無いかな」

「じゃあ馬車に積んでおくか」

「オッケー」


  五人は買い込んだ物を持って外壁近くまで移動した。そこには馬小屋と荷物置き場があった。荷物置き場には管理人が台帳をつけて管理していた。


「ギルドの仕事の前にここで荷物をまとめておくんだ。大物は宿に持っていくと面倒だからな」


  管理人はダリルそっくりの男で、目の下に大きなクマがあった。


「ようフリッツ」

「こんにちわダリルさん」


  なんとダリル本人だった。クマだと思ったのは青タンだった。

  何となく予想がついたが、一応理由を聞いてみる。


「顔、どうしたんですか?」

「ああ、あの後フィーナにちょっとな……」

「……」

「いいかジン、円満の秘訣は耐え忍ぶことだ。それに怒ってるくらいの方が夜は盛り上がる」

「そうですか……」


  「何言ってんだこのオッサン」という感想以外出てこなかった。

 

「ところで工房はどうしたんですか?」

「工房の仕事は訓練日とその次の日は非番だ」

「じゃあ今日は休み?……これはボランティアですか?」

「いや、ここにいるのは罰だ」


 僕には話が見えなかった。


「罰とは?」

「フィーナはギルドで上役でな、怒らせるとこうなる」

「あはは、ダリルさんはいつもこうだから大丈夫だよ。何だかんだ言って夫婦仲がいいし」


  ニールの話にフリッツもセイナも同調していた。



 …………



  荷物を預けた後、五人は早めの夕食を取ることになった。

  フリッツはギルド横の食堂ではなく、通りを少し行った少し落ち着いた店を選んだ。

  霞亭という名前の店で、テーブルマナーがギリギリ必要では無いレベルに見えた。

  キビキビと働いている給仕にフリッツが挨拶すると中に通される。

  予約を入れていたようで、テーブルには既に食器が並んでいた。


「明日は仕事だからな。酒は一杯だけにしよう」


  フリッツはぶどう酒を頼むと、給仕は用意していたボトルを開けて皆に注いだ。


「それでは新しいメンバーを迎える事が出来た幸運と明日の無事を祈って、乾杯!」


  五人は盃を上げ、乾杯をした。

  未成年の僕は酒の味がわかる訳ではないが、飲みやすく優しい味のワインだと感じた。

 まじまじとグラスを見てるとニールが話しかけてきた。


「ジンの国にはぶどう酒が無かったのか?」

「そういう訳じゃありませんが……20歳になるまでは酒を飲まないのです」

「へぇ……そう言えば何歳なんだ?」

「僕もカヨも17歳ですね」

「17! 童顔だなぁもっと若く見えたよ」


  ニールもセイナも驚いた顔をしている。フリッツはパーティーを登録する上で知っていたようだ。


「ニールはいくつなんですか?」

「俺たちは今年で20歳だな。 みんなこの辺の出身だ」

「へぇ」


  セイナはカヨに話しかけた。


「ちなみに二人はどんな関係なのですか?」

「そうそう、アレな関係なら気を使わないといけないしな」


  ニールの言うアレな関係は恐らく男女の関係という事だろう。

  フリッツに対してやましい事があるわけではないが、昨日は秘密ということにしていた。


「ええと、それはひみ……」

「下僕よ」


  僕の言葉を遮り、カヨは言い放った。


 そう言えば宿の親父には下僕と言っていたのだ。


「ほう、下僕というとカヨはいいところのお嬢さんなのか?」

「そんなところね」


 フリッツの質問に適当に答えるカヨ。


 何がそんなところだよ。


「カヨ姫、あまり身上を晒すのは良くないかと」

「その言い方やめろ!」

「そのお言葉使いの方をやめていただきたい。父上は常々「お淑やかにせよ」と言っているではありませんか」

「あんたねぇ……」


  僕はヤケクソ下僕ロールプレイを始めてみた。

 意外と悪くない。これから煽る時はこれで行こう。


  胸ぐらを掴まれている僕を見て、セイナはクスクスと笑っている。


「フリッツも迷宮なんかいってるが、こいつも騎士の家だからなぁ」

「継ぐ土地もない四男坊なんてそんなもんさ」


 彼は失笑しながらワインに口をつけた。

 騎士の家と言われても、僕にはピンとこない。

 日本でいえば武家的な感じか? 武家と言われてもピンとこないが。


「またまた、最近は家に呼び出されて貴族の娘とお見合いやってんの知ってんだぜ」

「お前なんでそれを……」


  そんな世話話をしてるうちに料理が運ばれる。

  上品な味をするコース料理を談笑しながら舌鼓をうつ。全て平らげた後にお金を出そうとしたら、フリッツに止められた。

  こういった食事の会計はパーティーの運用資金から出るらしい。

  借金生活の僕には嬉しい話だ。


「それじゃあ明日の8時に馬車小屋前に集合だ」

「わかりました」


  フリッツに告げられて各自宿や自宅に戻る流れになった。


 …………


  翌朝、僕とカヨは装備を整えて時間通りに馬車小屋へ向かった。

  昨日準備した事もあって、既にいつでも出られる状況だった。


「よし、メンツも揃ったし出発しますか」


  ニールは小脇に細い木の棒の束を持って馬車に乗った。


「その束は?」

「ああ、これは矢の素材だよ」

「馬車の中で矢を作るんですか」

「違う違う、馬車の中で練習するのに使うんだ。今回貸切だからな」


 そう言って一本取り出し、弓で構えて見せた。


「なるほど」


  僕とカヨは馬車に乗り込むと、既にフリッツとセイナは中で座っていた。

  大型の馬車のようで、中は広くて2tトラックの荷台くらいはある。

  二人は馬車に乗るのも初めてで、少しワクワクしている。


「じゃあお願いします」

「はいよ」


  フリッツは前に座っている御者に声をかける。ゆっくりと馬車が動き出した。


  街を出て街道を進み、人が見えなくなくとニールはジンに安物の短弓と練習用の矢を渡した。


「じゃあ、お手本を見せるよ」


  ニールも自分の弓に練習用の矢を構え、実際に馬車の外へ射ってみせた。


 シュ!

 コン


 街道脇にある木に当たる。


「こんな感じだ。鏃も羽も無いから全然飛ばないけど、早く構えて狙いをつける練習にはなるからな」


 僕はぎこちなく構えて弓を絞ってみた。


「こうですか?」

「もっと脇締めて左の指を……そうそう。じゃあ適当に狙いをつけて射ってみな」


 シュ!


  安物の弓だが矢はしっかり飛んで行った。

  15mほど先の木を狙ったが、脇を通り抜けて飛んでいってしまった。


「悪く無いな。この時点でフリッツよりも上手い」

「ああ、全くだ」


  フリッツは苦笑しながら肯定した。余程下手だったのだろう。


「最初は構えを意識してゆっくりやればいい。揺れてる馬車で動いてる的に当てれれば上出来だよ」

「わかりました」


  僕は矢を取り何本か射ってみるも、なかなか当たらない。

  ニールは一矢終わるごとに指摘をしている。


  少し腕がだるくなった休憩した。

 カヨの方を見ると、セイナとおしゃべりをしていた。

  内容はよく聞こえなが、楽しそうに話をしている。


  乗った時は気にしなかったが、セイナの服装は……ミニスカートとロングブーツだった。

  正面に座れば間違いなく下着が見える。

  昨日までは長いスカートというかローブのような落ち着いたワンピースだったような……

  それに比べて今日はかなり攻めているように見える。


「ニール」

「ん?」

「セイナの服装ってもしかして……」

「ああ、ダリルさんの趣味だな。でもの服は魔道具で防寒防熱……」

「いや、言わなくてもわかります」


 ニールはため息をつきながら言った。


「ダリルさんは「コレがあるからやめられねぇ」って言ってたよ。綺麗な嫁さん貰ってるのに何をやってんだか」


  露出のある実用的な装備を売りつけるダメな親父、ダリル。

  僕の頭にはそうインプットされた。




  日が高くなり練習用の矢が尽きた頃、馬車は街道からそれた小道に入った。15分ほど走り雑木林を抜けると山の斜面に城壁のようなものがそびえ立っていた。


  ここが一行の目的地、北壁の迷宮。

  不気味な雰囲気はなく、石階段、石畳の通路がポツンとあるようにしか見えない。

  ただ中は深く、人がいる気配はしない。


  馬車は外で待っていた別のパーティーを乗せて街へ帰っていった。

 


「軽く昼食を取ったら装備を点検して、探索にはいる。ジンとカヨは未経験だから予定通り短めの探索にして夕刻には戻ろう。ここで野営して明日朝の便で戻る」

「オッケー」


  フリッツは仕切って予定を告げる。

  セイナは雑嚢からパンと焼き菓子と水筒を取り出してみなに渡した。

  ニールは口に頬張りながら装備品の確認をし、リュックにまとめていた。

  それぞれが手慣れた感じで準備を進めていた。


  ジンも腰に剣、魔道具のランタンを下げてポシェットに入っている薬品を確認する。

  リュックには食料、予備のランタン、ローブ等が入っている。

  矢筒はリュックの横にくくりつけられ、接近戦闘時は邪魔になるからリュックと一緒に下ろせるようになっている。


  僕は彼らに色々と教えられなければ剣一本で挑んでいるところだったかもしれない。そういった意味では紹介してくれたダリルには感謝している。


「あなたの準備は色々あるのね」


 パンを食べながらカヨが話しかけてきた。


「お行儀が悪いですぞ姫」

「うっさい下僕ね」


  彼女は置いてある安物の短弓を引きながら遊んでいる。


「私は杖一本だし、やることなくて暇なのよ」


 彼女が腰には制魔の杖が差してある。魔法を制御しやすくして威力を落とす杖だ。


「そうだな……本当はその杖すらいらないからな……」

「しかも道中は魔気節約の為に魔法は温存するんでしょ? 出番あるのかしら?」

「無いなら無いでいいだろ?」


 カヨはジンに向きなり大真面目に言った。


「私も敵を倒したいわ」


 僕は思う、なぜこうも戦闘狂なのかと。


「二人は準備できたか?」


  準備の終わったフリッツが話しかけてきた。ニールもセイナも終わっているようだ。


「ええ、行きましょうか」


 そう言って僕は立ち上がった。


 そして一行は北壁の迷宮へ足を踏み入れる。

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