No.3 異世界転生冒頭


 不慮の事故の後、神様が現れた。



「君を異世界に送ろうと思って」



 あー、チートスキルが貰えたりする?



「ないよ。その人たちは特別。君が異世界に行けば、記憶も消えるし種族も変わる。知らんだろうが、君と同じ待遇の人の方が多い」



 なんだよ、それ。



「おいおい、君はずっと悩んでいたじゃないか。人生やり直したい、生きていても何にもならなかったって」



 そうだけど、そんな俺が主人公になれる世界に行けるんじゃないのかよ。



「元の世界でも君は主人公だったよ」



 ふざけんな。



「問答をしていて気付いたが、そんなに変わりたくないと思うくらい、君は今の自分が好きなんだね」



 好きじゃねえ。


 だってそれは、そんなものだけが、俺がすがりつけるすべてだから――



「深く考えることはない。しょせんはスケールの問題で、転校や転職と同類項だ。新天地で上手くいくかどうかもね――で、どうする?」



 ……こんなことなら。


 生きてるうちに、変わればよかった。

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