第423話 ロジック
「認めたくないがP.Tはいい仕事する」
庭を歩き周りながら地下への入口を探していたが見付けることは出来なかった。だがP.Tからの情報に寄れば戦後静広が購入しホテルを建てた丘には戦中陸軍の防空壕があったようだ。これでエレベーターの昇降エリアの底の更に下に地下空間が広がっている可能性が高くなった。
どこかに入口があるのだろう。
どこだ? 今までと発想を変えた探し方をする必要があるようだな。なら発想を変えるためにもここは一旦離れて違う作業をするか。
俺は入口を探すと同時に並行して勧めていたホテルの3Dモデルを構築することにした。地下への入り口を割り出すのにも役に立つだろう。
俺はタブレットで少々やりにくいがP.Tが入手したホテルの図面から3DCADでホテルのマップを作成しつつ、自ら歩き回って計測したホテルの外観の寸法データ等と照らし合わせていく。
騙し絵を見せられた気分になった。
丘に広がる庭園は問題なく終わったが図面から起こしたホテルと計測から描いたホテルが合わないのだ。
そりゃヘボが図面から立体化したときに間違って実際のものが違うということはある。だがこれは職人が作って実際に運営しているホテルだぞ。そんな間違いをしていたら倒壊する。だがホテルは問題なく稼働している。
図面を信じれば俺の計測が間違っていることになる。だがあれだけ丹念に時間を掛けて計測したデータが間違っているというなら俺は理系には向いていないことになる。今からでも大学を入り直したほうがいい。
次元が歪曲しているとでも言うのか?
いやいや最近魔と関わり過ぎていて発送が飛躍しすぎるぞ。まずは現実的に考えろ。
そういえばエレベーターの昇降エリアにある梯子の段数を数えながら階数を確認していたときに気付いたが梯子の段数がフロアの間で一定になっていなかったのだ。まあ階ごとにフロアの高さが違うこともあるからと気にしなかったが。
俺は記憶に従い段数から各階の高さを割り出し3DMAPに当てはめる。
「隠しフロア?」
エレベーターの扉の間隔が長いフロアとフロアの間に隠しフロアがあると仮定すればピタリとパズルは完成する。
エシラはそこか?
早速中に入ってフロアの高さを計測すればハッキリする。俺は逸る心を抑えつつホテルに戻るのであった。
ホテル内に戻った俺は早速フロアの高さを計測し、ほぼ図面通りだった。
確定だな。
普通に中を動き回っていては気付かなかっただろう。誤魔化しようのないエレベーターの扉の間隔を測ったから気付いた。
入り口はどこだ?
少なくてもエレベーターの昇降エリアに隠しフロア用の扉はなかった。合ったら階数を数え間違えていただろうが、地下一階が地上一階ということはなく確かに地下にあった。
幸いだが、こういうギミック好きが扉を隠すのを好みそうな美術館がこのフロアにはある。
しかし静広は実直が実業家かと思えば、悪戯好きの好々爺だったのかもな。あんたが仕掛けたトリックは俺が解いてやるぜ。
俺はこういうロジックが意外と好きなようでワクワクしながら美術館に向かうのであった。
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