第416話 激闘

 先手は取らせない。

 どんな力を秘めているか分からないがそれを使う前に仕留めてしまえば関係無い。

 ナイフが刺さったままの手を振り払い、引き抜けた血塗れのナイフがソフィアに向かって行く。

 牽制先制、ソフィアがナイフに気を取られた隙に本命の銃を引き抜く。

 俺の命を奪いに来たジャンヌの親しい男から奪った因縁と業深き銃。

 六発しかない銃弾。

 遊撃 威嚇 牽制 偵察 本命 予備を振り分けて命を乗せて引き金を引く。 

 俺はソフィアの次の一手に対応出来るように照準を合わせる。 

「ギリギリで良い動きだが、甘い」

 血飛沫とナイフをバレリーナのようにスピン回転と共に横に飛び上がって躱し、此方を睨み付けたまま一回転二回転三回転くるくると回る。

「なっ!?」

 一流のプロとも言える美しい回転から生み出される異様な光景に一瞬呑まれる。

 くるくるくるブチッと回らない首がねじ切れた。

「なっ」

 ポトリと落ちる首を体はサッカボールして此方に蹴り飛ばしてきた。蹴り飛ばされた首はガバッと口が耳まで裂けて開いて襲い掛かってくる。

「舐めるなっ」

 普通なら驚いている内に噛みつかれたかも知れないが、こういうのにはいい加減慣れてきた。俺は落ち着いて狙いを定め脳天に向かって引き金を引く

 バンッ、バンッ

 狙い澄ました一撃が性格に脳天を貫き首は勢いを失って転がり落ち、返す刀で体の方にも一発撃ち込んでおく。回転軸に当たり体は仰向けに倒れた。

「やったか」

 首と体両方を視界に収め残心。首は動かなくなったが体がバネのように起き上がってくる。

 まあ首が千切れて動くんだ、銃弾を撃ち込んだくらいで終わるとは思ってないさ。


 起き上がった体

 アンドゥオール

 左足が水平に上がり

 ルルヴェ

 スピン スピン スピン

 ジャンプ

 高速回転する左足が回転ノコギリのように空から襲い掛かってくる。

「ビックリショーかよ」

 銃弾で応戦するが左足に当たった銃弾は真っ二つになって逸れて行く。

「なら、これならどーだ」

 俺は咄嗟に転がっていたソフィアの首をサッカボール。勢いよく飛んでいった首は体とぶつかり絡まって軌道が逸れて壁にぶつかった。

 さーてこれで終わりじゃないんだろうな。

 俺は油断なく辺りを警戒すれば、元々いた位置にソフィアが平然と立っていた。

「女相手でも一切の容赦なし。紳士として失格だな」

「時代は男女平等だぜ」

「そんなのは平和ぼけした妄言だ。

 いつの時代で男は紳士たれ。やはりお嬢様には相応しくないな。

 やはりここで消えて貰う」

「やってみろ」

 啖呵を切ったが分は悪い。此奴のカラクリが分からない。このままじゃジリ貧で俺が負ける。

 残弾3発にシビれるハート。リロードする暇は与えられない。

 アンドゥオール

 左足が水平を越えて垂直に上がる

 ルルヴェ

 スピン スピン スピン

 ジャンプ

 今度はドリルのようになって空中から俺に襲い掛かってくる。

 今度はサッカボールする頭もない。俺は回避する為横に走り出し、ドリルも方向修正してくる。

 ちっやっぱり普通には躱せないか。

 ならば、一度あることは二度ある。

 俺は銃で空にいるソフィアでなくソフィアが元いた場所を銃撃した。これで貴重な弾丸は残り二発になったが魔相手には思い付いたことを試して損は無い。

 銃弾は何事もなく進みそのまま壁を剔ったが、なぜかドリルは軌道を逸れて俺がいる場所と違う箇所に当たった。

 回転が止まったソフィアの左足が床にめり込んでいる。だが此方は無視して回りの気配を掴むことに全力を注ぐ。

「やるな」

 突然ソフィアが別の場所に現れる。

「私の攻撃を三度防ぐ相手は久方ぶりだ。お嬢様が認めるだけの力はあるようだな」

「お褒めにあずかり光栄だね」

「これ以上ホテルを壊すのは不本意だが、・・・・

 私も滾ってきたとことん付き合って貰うぞ」

 ソフィアが百獣の王のように笑う。

「ああ逝くまでやりあおうぜ」

 逃げる気になったこの女を追跡できる自信は無いが向かってくるというなら好都合だ。

 なんとしても視界に入っている内に終わらせる。

「行くぞ」

 両手を広げ此方に向かってくるソフィア。

 今度はどんな仕掛けだ?

 俺も迂闊に攻撃を仕掛けないでカウンターを伺う。

 急に重力の消失を感じた。

「えっ!?」

 パカッと漫画のように天井が開いて俺は落下するように吸い込まれていくのであった。


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