第384話 悪魔の祝福

 白き裸体の少女の鏡合わせ。

 指を絡ませ互いに握り合い。

 潤んだ目と目で見つめ合う。

 青さと甘さに膨らむ双丘の上に乗る赤い果実がぶつかり、ぐにゅっと潰れ、愛おしげに唇が重なれば純白の柔肌で聖杯が描かれ、芳醇な甘さで満たされる。

 互いの口内に陰茎の如く舌を挿入させ、互いの手と手が互いの括れる腰に廻され一気に引き寄せる。

「「あんっ」」

 白き裸体の楽器が奏でられる。

 それが合図とばかりに理性が剥ぎ取られ美しい獣が二匹ベットに転がり互いに美しい肉体を貪る。

 互いに互いの胸を齧り付き。

 互いに秘所をまさぐる舐める。

 美しい肌が張り付くように密着し桃のように染まっていく。

 紅い唇が蠢き唇が求め合う。

 淫靡でありながらも美しい。

 花は一本でも美しいが、束ねれば美しさが増す。

 少女こそ至高の美。

 

 伊弉諾は余分なものがると言ったが、その通りだ。

 男は完璧な体から溢れた欲望が現出した余分なものがあるが故に醜い。

 伊弉冉は足りない箇所があると言ったが、間違いだ。

 少女の体は足りないものも余分なものも無い、完結して完璧な美。

 少女は黄金の曲線が内部へと流れていく途切れ無き無限のメビウスの美を形成している。

 少女はそれだけで完結している一個の完璧な美しきもの。

 対して男は終点が尖っているが為に循環は無く終わる。

 つまり男は終わっている哀れで不完全な醜きもの。

 わざわざ醜きものと美しきものを合わせる必要なんて無い。

 なのに世間はくだらない本能に惑わされ美で無く生殖を尊ぶ。

 生殖とは男と女、陰と陽が結び合い、新たな生命を誕生させる神の祝福と偽る。

 生殖こそ貴く、快楽とは堕落と断ずる。

 ならば女と女、陰と陰が結び合う美しきこれは何なのだろうか?

 どんな愛し合おうが

 どんなに深く結ばれようが

 どんなに純粋な愛だろうが

 快楽はあくまで刹那、次に繋がらずその果ては虚無という。

 そうなのだろうか?

 ならばこの快楽に意味は無いというのか?

 こんなにも求め合い。

 愛し合っているというのに。

 人を愛する快楽、その先を求めない純粋に人を愛する至幸の快楽。

 なのに

 神は祝福しない。

 神は否定する。

 ならば神が間違っている。

 神が祝福しないというなら悪魔が祝福してくれるだろう。


 くるくるくると快楽が互いの体を巡り昂ぶっていく。

 人を愛することでしか得られない瞬間がもう直ぐ開かれる。

「「あああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーー」」

 私達は至幸の快楽の果て悪魔に祝福された。


 二人の少女は肩を寄せ合いホテルから出た。

 もう互いに言葉はいらない、握った掌から伝わる体温だけで幸せを感じて歩いて行く。

 2人が人通りの少ない道を歩いているとその前を若い柄の悪そうな男が塞いだ。

「なんですか」

 黒髪のロングストレートの少女がもう一人のボブカットの少女を庇うように前に出て、チンピラに怯むこと無く毅然と言い放つ。

「おいおい、お前等2人でホテルから出てきただろ」

「それが?」

 自分達の行為に恥ずる事などないと言い分けすること無く言う。

「おいおいそんな強気でいいのか?

 俺お前のこと知っているぜ」

 チンピラは少女達が正体を知られていないから強気でいられると思ったようだ。

「嘘ね」

「嘘じゃねえよ。こう見えて俺お嬢様学校の音畔学園でやれそうな女がいないか見張っていたことあるんだ」

 音畔学園の通学路に潜み気弱そうな可愛い少女がいないか調べ、見付けたらなんとか弱みを探って脅し無ければ無理矢理脅し、やって、やり飽きたら風俗に売り払う。そんな夢想を描いていたクズ。幸い実行する前に不審者として通報されたので中止になっていた。

「暇なのね」

「その時にあんたを見たぜ、あんたとっびきりのべっぴんだからな頭の悪い俺でも覚えてるぜ。

 このこと学校に言っちゃおうかな~」

 チンピラは殴りたくなるような顔でロングヘヤーの少女を脅す。

「あなたの言う事なんて誰が信じるのかしら」

 ロングヘヤーの少女はチンピラの恫喝などその風のように平然としている。

「写真もあるぜ」

 チンピラはスマフォを見せ付ける。そこには二人の少女がホテルから出てくる様子が映されていた。

「ふ~ん、どうしろと」

 案外馬鹿じゃないのねと恐れるどころか感心したように聞く。ここで面白いことが聞ければ、ご褒美に褒めてあげようとばかりの態度。

「分かってるだろ。口止め料として抱かせろ。俺が女より男の方がいいってことを教えてやるよ」

 勿論一度抱いて終わるわけが無い。これを糸口に脅して飽きるまでおもちゃにして、飽きたら風俗に沈めるも良し、兄貴分に廻して覚えを良くするも良し。チンピラはバラ色の未来を想像している。

「ゲス通りでつまらないわね」

 想像通りのゲスな答えにロングヘヤーの少女は落胆したように言う。

「ああっそんな態度取っているとどうなるか分かってないな」

 チンピラは拳を振り上げて少女を睨み付ける。ここで更に少女がごねるなら容赦なく拳を振り下ろすつもりだ。

「そうね。まずはこの娘の相手をして貰おうかしら」

 ロングヘヤーの少女は何か思い付いた猫のように言う。

「分かりました。お姉様」

 傍目にはチンピラの威嚇に屈したロングストレートの少女が自分を守る為にボブカットの少女を生け贄に捧げたように見えるが、ボブカットの少女は躊躇いなく承諾する。

「おいおい、お前こそゲスじゃねえか。

 言っておくが俺は絶倫だぜ、一人を相手にした位じゃ収まらないかな」

 一人如きで果てると甘く見られたと感じたチンピラは凄みを込めてロングヘヤーの少女に言う。

「それは楽しみね。この娘を相手にして立っていられたら、私がお相手するわ」

「言ったな。お嬢様二人如き俺が足腰立たなくしてやるよ」

 この時のチンピラの脳内では自分の雄で屈服された少女二人のあられない姿を思い描いて幸せに浸っていた。

「ホテルに戻る?」

「いや、近くに絶好の場所がある、そこでやるぞ」

 チンピラは薄暗い路地裏を指差す。

「ホテル代も出せないの?」

「お前等みたいないいところのお嬢様を汚い路地裏で犯すのがいいんじゃ無いか」

 チンピラにそもそもホテル代を自分で出す発想が無い。ホテルでやりたいならホテル代は女に出させるだけのこと、今は正真正銘高嶺の花のお嬢様を貶めたい気持ちで言っている。

「ほんとしょうが無い人」

 少女はそれでも呆れ果てた表情で了承するのであった。


 ラブホテル街の裏路地は表が華やかであるほど暗くゴミが散乱し人気が無い。据えた匂いが漂うこんな場所でしたがる者など変質者しかいない。

「早く済ませてね」

 ロングヘヤーの少女は素っ気なく言う。

「俺は早漏じゃ無いぜ」

 ボブカットの少女はまずは胸のボタンを開き白い双丘を出した。まさにポロリと出た乳房は年の割には大きく、さぞや男達の好奇の目に晒されたことだろう。

「おいおい、まずはパイズリかよ。本当にお嬢様か」

 当然チンピラが少女の膨らんだ胸に目を付けていたことは明白、誘われれば疑うこと無くベルトを外しその醜い一物を差し出した。

 チンピラも言うだけあってその一物は無駄に大きく少女の胸でも全部は挟み切れなかった。

「おうっ」

 少女がその胸でチンピラの一物を柔らかく挟めば汚い濁声が上がる。

「んっん」

 むにゅむにゅしゅっしゅしゅと少女はその柔らかい胸を使ってチンピラの一物をしごきだした。

「うまいじゃないか」

 チンピラは恍惚の表情に変わっていく。

 むにゅむにゅしゅっしゅしゅ。

 ボブカットの少女はその胸で一物を包み込んでしごいていく。

「ああ気持ちいい気持ちいいぞ」

 チンピラは初めて感じる包まれていく感覚のあまりの気持ちよさに目を瞑って喘ぐ。

 むにゅむにゅしゅっしゅしゅ。

「なんか包まれているみたいだ」

 チンピラは恍惚に染まりボブカットの少女はその胸で男の一物をすっぽりと埋めた。

 むにゅむにゅ。しゅっしゅしゅ。

「なんだろう全てが包み込まれていくこの感覚は」

 チンピラの顔は無垢な子供が母に抱かれるような恍惚の表情になりボブカットの少女はその胸で男の下半身を包み込みだした。

「ああうふ、ん?気持ちいいけど何か・・・」

 むにゅむにゅ。しゅっしゅしゅ

 快楽に浸っていたチンピラだったが最後の本能で何か可笑しいと目を開いたときには下半身だけで無く鳩尾辺りまで乳に呑まれしごかれていた。

「まっまてなんだこれは」

 チンピラが抗議し慌てて抜け出そうとしたが逆に蛇に呑まれるカエルのようにすっぽりと上半身が呑まれていく。

 ボブカットの少女の胸はもはやチンピラの体を包み込めるほどに膨張しているというのに乳元のボブカットの少女の体は未成熟な青い果実のまま。

 笑ってしまうようなアンバランスさ。漫画や映画で見れば笑ってしまいそうなシュールさだが、リアルに遭遇すれば恐怖しか醸し出されない。

「なっなんだこれは、辞めろ辞めろ」

 恐慌に狩られたチンピラは必死に抗議するがボブカットの少女はお構いなく胸で男の体をすっぽりと飲み込みしごく。

 むにゅむにゅ、しゅっしゅしゅ。

「うごうべ」

 恐怖に抵抗していたチンピラの顔がほぐれていく。しごかれる度に全身の骨にヒビが入っていくというのに、絶妙に心地いい刺激。

「ふごごごふごへえ」

 むにゅむにゅ、しゅっしゅしゅ。

 チンピラの顔が快楽に染まってふにゃけていく。しごかれていく度に全身の骨が砕けていくというのに、骨という束縛からの解放。ナメクジになれたような怠惰な快楽。

「ふにゃあああああああ」

 むにゅむにゅ、しゅっしゅしゅ。

 チンピラの顔は完全に蕩け切り、少女は胸でチンピラの体全体をしごくスピードが上がっていく。

 しゅっしゅしゅッシュッシュシュ。

「いく行く往く征く幾」

 もうテクニシャンに弄ばれる生娘のようなチンピラは狂乱して喘ぐ。

「さあ行きなさい」

「逝くーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 ロングヘヤーの少女の合図で男は口から、天に向かって噴水のように肝臓腎臓胃大腸小腸汚物に精子と血をまぶして吹き上げた。

「汚いわね」

 ぴゅっピュウと男の口から天に吐き出される命を見ながらロングヘヤーの少女は呟く。

 ドタッと乳から解放されてチンピラは絞られた雑巾のようになって地面に落ちた。


 この世のものとは思えない光景。

 漫画にしてはリアルすぎて、リアルにしては現実離れしている。

 適当にオッサンでも引っ掛けて軍資金を稼ごうとホテル街を回っていたら、チンピラに連れて行かれる少女二人を偶然見てしまった。一人はよく分からないが、一人は学校で見覚えがある。自然と足は後を付ける。助けようなんて思ってのことじゃない、うまくいけばチンピラと少女どちらかを脅せないかと思ってのこと。

 そして見てしまった光景。

 足が竦んで逃げ出したくなるが上手く利用すればあの男を排除出来ると思ったら足はその場で踏ん張った。

 意思もある。目的も明確。後は持っていき方次第。

「何を為ているの」

 物陰から飛び出し殺人を糾弾した。

 消されるかも知れないが、後で脅迫するより現場を押さえた正義の目撃者を装うことにした。

「別に害虫を一匹潰しただけよ」

 ロングヘヤーの少女は私の命を賭けた糾弾を蚊を一匹潰したかのように軽くあしらう。「巫山戯ないで、人を1人殺したのよ」

 どうなってるのよ。殺人現場を押さえられて逆上するなら兎も角どうしてこうも平然としていられる。警察に通報されたら人生終わりじゃない、犯罪者になったらいい生活出来ないのよ。怖くないの?

「あら、だったら警察に通報したらどうかしら」

 予想通り、この女、警察を恐れない。これじゃ取引出来ない。

「後を付けていたのは知っていたわ。面白そうだったから放っておいたけど、この光景を見ても逃げ出さないで出てくるなんて、何が望みなの?」

 私が黙り込むと向こうから水を向けてきた。話の早い女は嫌いじゃない。

「その力あたしに貸しなさい」

 私は未だ異様に膨らんだ乳を出したままのボブカットの少女を指差して言った。

「意味分かっているの?」

「ええ、その力で男を1人消して欲しい」

 言ってしまった。もう後戻り出来ない。

 今まで気に入らない女を男に頼んで潰したことはあるけど、明確に殺人を決意したのは始めてだ。だがあの男にはこれくらいで無いと勝てない。いやそんなんじゃもう収まらない。あの男の存在を消さなければこの先悔しくて眠れない。

「対価は?」

「このことを黙っているくらいじゃ対価にならないんでしょうね」

 理由は知らないがこの女は通報されることを全く恐れていない。この程度揉み消せる強力なバックがいるのか分からないが、この女が殺人を便所に行くのと同じくらいにしか忌避してないことは分かる。

「ええっだって本当に黙らせたいならここで潰せばいいだけだし」

 あっさりと私を殺すというし、実際出来るのだろう。

「お金なら・・・」

「入らない」

 薄々予想していたがあっさりとこの女は拒否する。

 お金はあんなに素晴らしいのに、あの男を潰して父をもう一度籠絡する。父が好きな深窓の令嬢はもう演じられないなら抱かせてやってもいい。

 娘の体に溺れない父はいない。

 なんなら私を見捨てた役立たずの母を排除して野上家の金は私が独占する。

 そんなバラ色の人生のためにも私はこの女が望むものを差し出さなくては成らない。

 何が望なんだこの女は?

「そうね成功したらあなたを抱かせて貰えないかしら」

 金に興味は無いが色には興味があるか、良かったこの女も私と同じ。私は金も色も権力も欲しいがこの女は色が欲しいだけ。

 仲間だ。

 それにしても真性のレズで色魔だったなんて、その澄ました顔からは想像出来なかった。てっきりその後ろを子犬みたいに付いてくるボブカットの女と純愛に燃えているかと思ったのに。

 女同士なんて吐き気がする。

 それでもそれしか手が無いなら私はやる。取り戻すためなら女だろうが爺でも抱かれてやる。

「分かったわ。この体好きにさせてあげる」

「契約成立ね」


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