第377話 まともな捜査
昨日は学内で襲われた直後に鮎京に痴漢扱いされた上に用事があった為に中断してしまったが、今日は万全の体勢で再度新聞部部室に来た。
今度は事前に教頭に中断した部活見学の一環(最後かも知れないので思い出として見ておきたい的な雰囲気を漂わせて)として許可も取ってあるので見つかっても堂々と反論できる。
装備も前回の反省から学校ということで遠慮していた火器を持ち込んでいる。S&W M36、いつも使っているコンバットマグナム S&W M19に比べれば火力は心許ないが小型で携帯性は優れている。嫌われ者なので女生徒が気軽に近寄ってこないのも幸い、余程気を抜かなければ見つからないだろう。
鍵を使って鍵を開けドアを開ける。授業中だ生徒が通る可能性はほぼ無い、それより何かあれば直ぐに逃げられるようにドアを開けっぱなしにして中に入ると誰もいない。だが前回は多分奥の現像室からあの魔人は出てきたと思える。
俺は懐に手を入れ忍ばせておいた小型銃のグリップを掴む。
これでいつでも抜き撃ちは出来る。
懐に手を入れたまま部室の奥に警戒しつつ向かって行く。今回は百合の匂いはしないなと思っていると現像室のドアの前まで来た。
ドアをゆっくりと開け、身を隠しつつ中を覗く。現像室だけあって暗くて殆ど中は見えない、俺は手を伸ばし壁にあった灯りのスイッチを入れる。
「ふう~」
息を吐く。
灯りに照らされた現像室内には誰もいなかった。
懐から手を出して現像室に入り、ぐるっと見渡す。
かつてはここで写真の現像をしていたのであろう。古い刑事ドラマなどで見る現像用の洗い場は取り残されたようにあるが、棚には現像液で無く色々とファンシーな物が置いてある。カラフルな蝋燭にアロマか? 掃除も綺麗にされていて、流石女子高という所か何処か薄汚いイメージの現像室はそこには無かった。
んっあれは何だ。気になって近寄って見ると、壁の隅にマットが丸めて立て掛けてあった。
何に使うんだ?
その後も棚の中とか調べたが、あるはずのものが無かった。
昨日の遭遇を脳裏に思い浮かべる。
少年で無いことを僅かに主張する薄い胸。
ほっそりと脂肪がのった腹。
ガラス細工のように細い手足。
光を反射して雪のように輝く産毛と秘所を恥じらい隠す恥毛。
少女だけがもつ女という蝶に脱皮する寸前だけが見せる肉体。
死人のように白く透き通った肌と合わさって妖精のようだった。
思い返しても、あの少女は素っ裸だった。
あの少女がここの生徒だとしたら制服と下着はどうした?
まさか素っ裸で登校した訳じゃあるまい。この部屋に来るまでは服を着ていたはず。普通に考えればこの部屋に入ってから脱いだのだろう。
その服がないということは、誰かが片付けた。
誰が?
職員室の遺失物置き場に制服は無かったので、ここを使用したまともな生徒が片付けた線はないだろう。下水に流された後夜中に密かに戻ってきて回収した可能性もあるが、常識的に推測をすれば・・・協力者?
ここに制服が残されていれば身元が割り出せるという目論見は崩れたが、代わりに協力者の影が見えてくる。
これは、ますます迂闊に行動できなくなったな。
確かめたかったことは確認できた。後はと現像室を出てパソコンデスクの前に座る。
まあこのパソコンに事件の真相が残されているなんて可能性は低いが0でないなら確かめる、でないと後で気になってしょうが無いからな。
パソコンを起動、所詮学生共有ノーパスで入れる。HDDの中身をざっと見て気になるフォルダーを探すとネタと書かれたフォルダーが見つかる。
あるとすればここか。
これが新聞部のネタか。
中はネタの名前と日日が記されているフォルダーの羅列。ここで漫画だとぱっぱとキーワード入れてあっという間に検索し欲しい情報が手に入るのだろうが、そもそも何を検索すればいいのか分からないので、ここ2ヶ月以内で気になる情報が無いか見る。
どうも部員毎にフォルダーを分けていて、失踪した新聞部員大村のフォルダーもある。
フォルダー開けると、こんな女学園の新聞部なんてお嬢様の暇つぶしと思えば意外と真面目活動している。大村という娘は少なくても情熱はあったようだな。
ここ最近だと目玉特集として学園の七不思議をやる予定だったようだな、まあ女子高生の多感な時期はオカルトに嵌まるからな。こういうのはユガミとの親和性が高い何か手掛かりがあるかも知れないと見ていくが、時間が経つにつれて更新頻度が落ちて情報も薄っぺらになっていくのを感じる。情熱を失った? それとも他に夢中になるものが見つかった?
ここに失踪のヒントがあるのかも知れないな。
取り敢えず、全てUSBにコピーしておくか。コピーを待つ間にも中身を見ていくが、別に学校の不正を追っているような形跡は無し。まあ当たり前か。追っていたとしてこんな共用パソコンのHDDには残さないだろ。
ふう。
USBのコピーも終わった。また何か起こる前にさっさと退散しよう。
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