第339話 バレー部
嘉多に案内されて体育館に連れられてきた。
講堂も兼ねている体育館で正面にはステージがあり、観戦用の二階のギャラリーも広く筋トレやストレッチとか出来そうで、実際雨の日とかはグランドの運動部が利用しているそうだ。
二階のギャラリーから見るとアリーナは真ん中にネットが張られ、バレー部とバスケット部が練習、ステージでは演劇部が練習している。
事前に仕入れた情報だとバレー部は学校も力を入れている県内の強豪で、バスケット部とバトミントン部は半分を交代で使用だが、バレーは半分を独占しているらしい。
学校いえど資本主義に生きる組織、優秀な部にリソースを集中するのは何も間違ってない。バレー部のおかげで学園の知名度が上がり生徒が集まり経営が上向くとなって、バレー部への優遇はコート半分の独占だけでないらしい。
「はっ」
ネット際では、晒した生足にテーピングやらサポーターで痛々しい女子が飛び上がりボールを叩き潰す勢いでスパイクを放った。
すげっ。
人でも殺せそうな勢いでボールは床に突き刺さって跳ね返っていく。だがそれでも女子を凝視していた中年は不満そうに野太い声を上げる。
「おらっ気合いが足りないぞ」
あれで気合いが足りないのかよ。床でも破壊する気かよ。
指導をしているのはバレー部の為に招聘したコーチで体育教師と兼任してるが主はバレー部の指導という大久コーチである。
偏見だろうが、出た腹に脂ぎった顔をしている濃い中年なので、バレー部のコーチのセクハラに耐えきれず失踪したなんて安易なドラマが容易に描けてしまう。
口の軽い部員を見付けて是非買収して内情を聞きたいところだが、まずは大久に近寄って見るのも手かも知れないな。酒でも驕って煽てれば口が軽くなりそうだ。
「バレー部に興味ありますか?」
やべ凝視していたのを女子高生を凝視するスケベな奴だと勘違いされたかも、いや十中八九されたな。俺はそういう勘違いをされる男、なんとか誤魔化そうとバレー部の凄さに感心してた風に言う。
「ええ、まあ凄いですね」
「残念ですけどバレー部は入れてくれないでしょうね。彼女達は本気なので素人のあなたなんかに邪魔されたくないと思っているでしょう。
あっちのバスケット部の方がいいと思いますよ。それともあなたがバレーの国体選手並みなら違いますけど」
嘉多に何の含みも無いのだろう淡々と俺に提案してくる。
確かにバスケット部の方が真面目なんだろうがバレー部と比較するとのびのびと楽しんでいるように見えてしまう。
エンジョイ勢とガチ勢の違いか。
ちなみに俺は受験ガチ勢でしたが運動ガチ勢と違って賞賛されることは無くガリ勉と卑下されていたな。
なぜ頭脳を鍛えることは疎まれるんだろうな。
「素人ですよ。
それでもマネージャーのまねごとくらいならさせてくれるんじゃ無いんですか」
「入りたいのですか?」
意外と食い下がる俺に嘉多は軽く驚いた顔をする。
「いや~ただ折角なので強豪高の部活というのも体験するのもいい経験かと」
ここで安易にバスケット部でいいと言ったら、やっぱり女子に見穫れていたと思われそうだし、そもそもバスケット部に用はない。あくまで狙いはバレー部と接点を作ること。
「そうですか。明日にでも大久先生に話してみましょう。一日くらいなら体験させてくれるかも知れませんね」
あら意外、俺の言うことを信じて動いてくれるのか。
真面目な人だな。
「そうですかお願いします」
「確約は出来ませんよ。
では他の部活を見に来ましょう」
「はい」
バレー部とは上手く接触できそうで幸先がいい。他の部活もこう上手くいくといいなと俺はあり得ない未来を願うのであった。
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