緑の輪の解放

第333話 緑の輪の解放

 月光に染まる若葉が息吹く

 緩やかな勾配の並木道

 両側の木々がアーチを描いて月明かりが漏れてくる。


 少し見上げる視線の先に伸びていく緑のトンネル

 入り口は巨人すら通れそうなくらい大きく

 遙か向こう自分の首ぐらいに小さく見える出口の先にネバーランドを夢見る。

 

 緑の香りに包まれ

 土の感触を楽しみ

 歩いて行く


 徐々に徐々に

  最初に見た通りに狭まっていく

   緑のトンネル


 遙か先まで続いていそうだったのは遠近法の錯覚

 新緑が肌に触れあうほどに狭まっていき

 鼻が詰まるほどの濃厚な緑の香りに脳がトリップする


 それでも引き返さない

  引き返せない

   ネバーランドを目指して進む。


 ぎゅっと首すら絞まるほどに小さいトンネルから首を出す。

 すっぽり首に嵌まった緑の輪

 そこから勇気を出して更に一歩踏み出せば

 地面の感触は無くなる浮遊感


 ああ、これが解放のネバーランド

  クラスでのいざござ

  教師との軋轢

  受験のプレッシャー

  親からの干渉

 全てのしがらみから解放される。


 風に揺られて

 ぷら~ん ぷら~ん

 一糸纏わぬ生まれたままの青い果実

  少女の両足が振り子のように揺れている。


 ぷら~ん ぷら~ん

 現世のしがらみから解放された姿

  自分だけの姿で


 ぷら~ん ぷら~ん

  ぷら~ん ぷら~ん

   ぷら~ん ぷら~ん

 青々と茂った緑の葉のドームからぶら下がって

  少女達の生足が風に揺られている

 何本も

  何本も

 白い生足が風に揺られている


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