第289話 雲を縛る鎖
如月さん達と別れ地下駐車場から地上に出るとシルバー色が無難に溶け込むワゴン車が一台待機していた。天見は当たり前のように乗り込んでいき、俺も続いて乗り込むと運転席にはてっきり天見の従者でもいるかと思えば大原がいた。
「社長、遅くなってすいません」
まだ俺のことを社長と呼ぶのか。
「見限らなかったのか?」
そこまで俺に尽くせとは自衛隊のお偉いさんに命令されてないはず。寧ろ厄介ごとを避ける為傍観しろくらいは言われているはず。
忘れちゃいけないのは大原達は自衛隊の意向を受けて対魔戦のノウハウを会得する為に俺の所に来た仮の部下。謂わば将来の商売敵。
「何を言っているんですか、会社が潰れたら路頭に迷うじゃ無いですか。バイトじゃあるまいしそうそう危なくなったらって簡単に転職なんてできませんよ。
それともそうなったら社長が養ってくれるんですか?」
大原が珍しくウィンクなんかして冗談を言ってくる。これじゃまるで八咫鏡で腰を据えて働くみたいじゃ無いか。
退魔官腰掛けの俺が腰掛けで作ったダミー会社が八咫鏡、知らないうちに本腰を入れないといけなくなったのか?
「俺は路頭に迷うどころか刑務所勤めだよ」
考えるのが怖くなったので笑い事じゃ無い冗談を返す。
「ならなおのこと頑張ってください。
影狩が黒田の後を付けています」
ついさっきまでは、独り者の自由気ままの雲。
振られれば大学生に戻るのも負ければ闇の世界に潜るのもこの身一つで思うがままに何処にでも行けると思っていたが、自分で思っていた以上に雲すら縛り付ける絆が絡まっていたようだ。
流石の俺でもこの絆を軽々と断ち切っていいものじゃないくらい分かる。
自分らしくないのは分かっているが、この絆自分から大事にする。
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