case13. 黄色いアヒルの子/SCP-1356,SCP-200-JP


「アヒルの子って何て言うんですかね」

「……アヒルの子じゃないの?」


 無邪気な声にびっくりしながらもそう答えると、女性職員は「え」という顔をした。


「アヒルの子はアヒルじゃないんですか!?」

「えっと……いや、アヒルだと思うけど……子供も『アヒル』って呼ぶの?」

「違うんですか?」

「アヒルの子も『ひよこ』と呼ぶんですよ」


 会話に横やりを入れて来たのは眼鏡をかけた先輩職員だった。

 というより、話を振って来た彼女も自分より先輩のはずなのだが、普段の言動や年齢も自分より年下なせいでどっちが先輩でどっちが後輩かわからない最近だ。


「アヒルの子でも『ひよこ』でいいんですか?」

「『ひよこ』はそもそもひよっこから来てますから、使い方は間違ってませんよ」

「へぇ~! そうなんですか、ひとつ勉強になりました!」


 生真面目な眼鏡の先輩の言葉を受け、女性職員は納得していた。

 そして先程から漁ってる箱から何かを取り出し、それを自分のデスクへ並べる。

 彼女のデスクは彼女自身を表すような小物や文具やらで占められていた。


「さて、赤と青と黄色、どれがどれだと思います?」

「……どれって?」

「もー、決まってるじゃないですか。これですよこれ」


 机の端に並べられたのは赤、青、黄色のアヒルだった。

 風呂に浮かべるというバスダック、ラバーダックというオモチャなのだが……。


「……これ、市販のだよね?」

「そうですよ? それで、どれがどれだと思います? あたし的には黄色が1356で、青が200-JPかな~って思ってるんですけど」

「……それってやっぱり、SCP-1356とSCP-200-JPのこと言ってる?」

「はい!」

「オブジェクトの番号つけるの? そのオモチャのアヒルに?」


 そう尋ねると、彼女はその通りですと胸を張った。


「あたし可愛いオブジェクト好きなので! 保管ロッカーから持ち出せない代わりにこの子達を愛でることにしたんです!」


 オブジェクトの詳細を知っているはずの彼女がそう笑っているのを見て、やはりこの財団は変人ばかりが集まるんだなぁ……と悲しくなった。



[CREDIT]

SCP-1356「ゴムのアヒル」©Skara Brae

http://scp-wiki.net/scp-1356

SCP-200-JP「浮かばれないアヒル」©shinjimao

http://ja.scp-wiki.net/scp-200-jp

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