昴の話(4)【動作チェック】を通り抜けて
「僕に決めろって言ったよ。どういう殺しかたをするかは僕が選択していいって。……あのひとはねえ、あのひとは感情機能が人間としていちおうはあるはずなんに、あのひとはそーいなときにもきれいに笑えるひとなんさ。そんな判断、できんよ。どれも残酷なやりかたばっかでさ……で、黙ってたら、いちばん年少でいちばんかわいらしかった女の子が一瞬で射殺されたよ。話が違うって、残った四人は怒りだした。きのうまでは優しい先生みたいな顔しとったのになあ、あのひとは子どもたちのほうを見もせずに、でもほらカメラが回ってるわけだからさ、そいつらには説明しとったよ」
『あら、そんな心配そうな顔をなさらないで。この人体は高柱天研究所が研究費で購入したものです。ああ、人間じゃないんですわよ? 人権は剥奪済みです。でもこの人体群を譲ってくださったかたはさぞお喜びなのではないかしら。だって人権って売ったらそれなりのお金になるんでしょう? それでわたしもこの研究所のたいせつな研究費をいくらか与えてやったんですもの。そして昴の感情装置の動作チェックができるのです。すごい、わたし、……これってひと助けってことですわよね?』
喚く子どもたち以外はだれもそのひとに反論などできるわけもなく。
そのひとは興奮して。
『ねえ、ねえわたしのかわいい昴ちゃん、つ、次はだれ、だれ殺す? だれからでもいいのよ、昴ちゃんがなんでも選んでいいのよ、ほら、ほらほらほら、昴ちゃんとあの個体は仲がよかったわよねえ、ねえ、ねえ、いまどんな気持ち? 悲しい? 悔しい? 怒ってる? ねえねえねえってばあああどんな気持ちなの!』
高柱天に肩を揺さぶられたところで、昴は答えることができなかった。
――感情が揺れているはずもなかったのだ。
だって、もともと、感情なんて彼女のなかに存在しなかったのだから。
そんなことを繰り返したのち、その日のうちに、子どもたちは残酷なやりかたで殺された。……【動作チェック】、ただそれだけのために。
あとは単調な繰り返しだ。昴も歳を取るようにつくられた。十三歳、十四歳、十五歳と歳を取っていく。それぞれの一年間で子どもたちがやって来て、一年そこで過ごしたのちに殺された。昴に刃物を持たせたときもあった。
昴は完璧に動作チェックを通り抜けた。
そして十五歳、四回目の定期動作チェックを終え、昴は鬼ヶ原学園に入学した――。
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