【矢野悦也、エラー】

 ちかり、と。

 光のような欠乏感を感じる。

 感情が、ほしい。

 目の前の、羽多の、その感情が。

 ほしい。

 ほしいほしいほしい。

 ないとくるしい。

 だからほしい。

 俺は、声を絞り出す。

「……くれないか、それ、羽多」

 羽多は涙を拭うと、水面が広がっていくように、笑った。

 ――まあ羽多だってわかってて来てんだろう、そもそもが、そのつもりで。そんなことは俺だって、わかってる、んだけど、……わかってるんだけど。




 俺が渇望しているのは、【感情】だ。

 いつだって。どこだって。なにをしていたって。

 普通の人間が水や空気を欲するように、――俺は、いつだって【他人の感情を欲している】。

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