第52話 妖怪鉄砲玉

 まず初めに断っておくのですが、怪力乱神を語らずという古いことわざ的なものがありまして。要は、理屈では説明できないような現象や存在について 語らないんだよ、という意味なのです。例えば幽霊とかそういうの。

 まあ、小説を書いたり読んだりする人にとっては「そんなん無理じゃ」って話になるとは思うんですが、あえて注意書きをしておきたいと思うのです。


 小説という時、大きく分けて二種類のものがあるといえるのではないでしょうか。①フィクション

②ノンフィクション

 そもそも小説というのは人間の脳内から作られるものなのだから、感覚の描写などは人間の感覚に由来して書かれるんだと思うので、中間くらいのものが一番多いんだろうとは思うのですが。

 もしも猫が小説を書くことができたならたぶん、人間には理解不能な描写になるんだろうなあ、とか……「尻尾を畳に打ち付ける俺を見て雌猫が逆上し、雌猫はさっき食べたチュールを吐いた」とか言われても、何でそうなったのか理解できる人間はあんまりいない気がします。

(猫が尻尾を地面に打ち付ける行為は、猫の怒りを表現しています。雌猫はおそらく恐怖と嫌悪の気持ちを強く抱いて、その不快感が身体的な反応となり、吐いたのかもしれないです)


 今からお話しするのは、妖怪の話ではありません。人間のお話です。人間なんだけども、私の脳内では妖怪として認知されているので、妖怪鉄砲玉と名付けた次第です。


 私が某所で小説を掲載していた時の話です。

 ある日、数か月前の活動報告にコメントが書かれました。「なんじゃあ」と思って読んでみるとそこには、怒りの文章が書きこまれていました。それは「誹謗中傷は許せないですね、ガツンと言ってやりましょう!」という内容で、まあ、私に対する誹謗中傷にたいし、非常に同情してくださる内容であったわけです。ですから私は「そうだね、ほんとうに腹立ちますね!」的な感じで、同調したのです。


 しかし私は同調しつつも、そのコメントを寄せてきたユーザーがどんな人物なのかが気になったので、その人の作品をざっと読んでみたのです。そして、なんとなく怖くなってきたのでした。何で怖くなってきたのかというのを説明し始めると人物が特定できてしまうかもしれないのでアレなんですが、とにかく、公表している経歴が反社である事からして、今は辞めたとかも書かれていないし、信用できないという風に思ったのです。(入れ墨を隠さない人が道端で声かけてきた感じの状況)


 しかし話はそこで終わらなかったのです。

 信用できないなあ、怖いなあと思っているところにそのユーザー……鉄砲玉のT氏からさらにメッセージが届いたのです。その内容は、私がメンタルをやられていないか気遣う内容でした。


 ふつうの交流ならば「お気遣いいただき恐縮です、ありがとうございます」となるはずなんですが、私は内心「やべえロックオンされたな」と思いました。案の定、そのあとしばらくして、お気に入りユーザー登録されたので、私もT氏をお気に入りユーザーとして登録することにしました。心の中で「どうなるんだろう」と思いながら。


 そんで、なんだかんだあって色々めんどくさくなり、某サイトでの活動を休止する事にして、その事を活動報告に上げ、作品のすべてを非公開にしたのですが……しばらく経ったら、T氏からメッセージが届きました。「大丈夫ですか」と。私は「大丈夫です」的な返事をしました。すると少ししたらT氏から、お気に入りユーザー登録が外されていたので、私もお気に入りを外したのでした。

 私は「ああ、サイト内で仲間を作るためにああやって、正義漢の体で近づいてきたんだなあ。そもそも作品なんか見ちゃいなかったんだ。なんだかとても屈辱的だけど、私の実力不足って事なんだろうなあ」という感想を抱いたのでした。


 T氏がその後どんな活動をしているのかというと、なんだろなあ。あんまり言うとアレなんだけど、相互お気に入りのユーザーのトラブルに対応しますよ、という感じの活動をしておられるみたいです。なんか、誹謗中傷には私が鉄砲玉としてカチコミますよ、的な。それを見た私は「ああ、向こうから去ってくれて助かったなあ。劇団任侠のメンバーから外されてよかった」と思ったのでした。


 ちなみに、小説投稿サイトでの報復行為っていうのは、荒らしに対する荒らし返しであるので、喧嘩両成敗となる事もあるのです。ですから、T氏のお仲間たちが「やめなよ」とT氏を止めないところを見るに、ああ、仲間といってもしょせんは他人なんだなあ、と少しだけ、T氏に対し気の毒に思うのでした。


 小説投稿サイトにはたまにこうした、妖怪が現れるんだよ、というお話でした。

 これはフィクションではないんですが、なんか、嘘みたいな話に仕上がったなあという感じですかね。


 追記

 喧嘩両成敗と言いましたが、ある事例によれば、報復した側の方が分が悪くなり、結果、報復したほうだけが投稿サイトから永久追放処分となった事もあるのです。もちろん、報復行為が正しいとは言いませんが、そういう事もあるんだという事なのです。

 悪口とか嫌がらせをされたらまず、された当人が運営に訴え出るなりするのが本筋であると思います。そしてもしも報復をするのなら、自分自身で行うのが本当なのです。他人にそれをさせる、またはそうすると言うのを止めないのは、ものすごくあかんと思います。なぜなら、自分の手は汚さないで、誰かにその汚れ仕事をさせるという事なのだから。

 私は意図せずしてそうなった事があるんですが、それはそれは後悔しました。誹謗中傷コメントを二回くらいされた時点で、運営さんに通報し、コメントした人をブロックすべきだったと後になって思いました。

 鉄砲玉をやる人は、そうしたくてしているんでしょう。だけど、少し考えてみてほしいのです。友達ならば、そんな事はやめてくれと言うんじゃないのか、と。そして、自分が守ろうとしている人たちは、友達なのか、と。



 

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