第26話 けんか
何だろうなあ。
一年前かなあ。ある方から詩を褒められた事があったのですよ。その方がおっしゃっていたのは、良い詩とは、という事でして。ちなみにその内容は、感覚としては覚えているんだけども、言語としてはあんまり覚えていないのです。まあ、私が詩を吐き出す際は、その方の言葉が原点となっていることは間違いないんだと思う。ただ、うまく出来ているかといえば、分かんないんですが。ちなみにその褒めてくれた方と私は一度、喧嘩をしたことがあります。
創作の場、という事を考えるに、自分なりの実験場があって、他の研究者もいて、それぞれが自分のテーマについて、試行錯誤している。試行錯誤なので、当然失敗というか、実験の積み重ねができて、それが作品なんだと思う。その作品の中から、成功例がどのくらい出来るのかは、分からない。もしかしたら、成功例なんか出ないかもしれない。だけど、トライ&エラーで何度もやる。
他の作者がもしも盛大に失敗したとして、例えば、実験室を水浸しにしたとすると、それを見る事は、私の糧になる。なので、失敗例を見る事も私の学習なのだ。
ある人が失敗している。それを見て、学ぶ。その時その失敗は、他の人の学びになる。そういう意味では、沢山失敗している人はありがたい存在である。私がその失敗を全て、自分で行うのは大変だからだ。
結局何が言いたかったのかというと、まあ、「何だこれは」と、共感出来ずに引っ掛かったものが、自分には無い何かだという事だろうし、そういうものを締め出さないで観察するのは、有意義な事だと考える。出来ればどうして失敗したのか、意見交換する事もあるだろう。あとはそうだなあ。人情としては、作者同士の喧嘩は何か色々やりづらくなるので面白くないんだけども、喧嘩が好きな人という存在を認める事もまあ、ある程度はやんないと……
あー、何だろ。君のその愛想の良さが、周囲を湧かせる言葉が、君の行った暴力をより際立って見せる。その暴力の痕跡は真っ黒に汚れている。あれはヤクザだ。ファミリーには優しいが、敵には容赦ない、マフィアなんだ。マフィアの倫理と私の倫理は相いれない。ならば、私は背を向けよう。君のその倫理に対し。君の正義はそういうもんだと私は判断する。私は、そうだなあ。刃を向ける先は、矮小なものではなく、偉大なものだけにしたい。何を矮小とし、何を偉大とするかは、私の問題であり、君の問題だ。少なくとも、実験で失敗を繰り返している同業を私は、偉大とは思わない。現実として。
体よりでかい盾構えて、何をそんなに怖がっている?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます