第21話 夢日記

 その部屋は三階にあり、三方に窓がある。そのうち二つの窓にはカーテンが無く、窓の外から入江の町が見える。水面はキラキラと太陽光を反射し、ひどく眩しい。古い作りの部屋で、階段がその部屋を仕切るように配置されており「階段穴」の周囲には手すりが無い。畳は、その部屋の古さの割には綺麗で、ささくれ立ったりはしていない。


 目が覚めたら自室だった。


 ここいらには蜂の音が無い。枕木の臭いも。当然牛はいない。猫すら見当たらない。全てが遠く感じる。一体ここはどこなのか。何でこんな遠くに来てしまったのか。帰り道も分からない。


 冒険というのは箱の中で始まり箱の中で終わるのがいい。人生の冒険は手に余る。今ここにいる事は単なる成り行きだし、善悪はキャラではなく世の水のようでどうにもならない。信じてもいない事を真剣に他人に語れるはずもない。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る