尼御前さま、オーバーキル！！！！

第四夜 いよいよネット版あとがき２

■安倍播磨守靖晶

・こちらは比較的わかりやすく手癖。

「俺にはわかりやすいこじらせた話の長い男」

　名前の由来は別に木多康明ではない。

　漢字に月と日の入ってる名前作ってたらいつの間にかこうなってた……

　多分安倍さんちの嫡男には「ヤス」入れなきゃいけないとも思ってた。

　この漢字、平安時代にあるのか。と思ったが意外とあるっぽい。

・俺の書くキャラの中では下手な悪属性よりタチが悪いトゥルーニュートラル。

　カオティックグッドでもやらないことを簡単にやってしまうＴＮ、プライドも良心もないので「あ、それできるじゃん」と思いついたら何でも実行してしまう。

　プロット段階では「普通・常識人」枠にいたがご覧のありさまである。

・晴明の曾孫、泰親のじいさんくらいの架空の安倍家惣領。

　くらいの、って具体的なのかぼやっとしてるのかわからんな。

　年代をこの辺、と見定めると「まだ五位鷺という言葉ができてない」「鵺や三井寺の鼠なんて妖怪はいない」ということになるが気にするな。

　晴明桔梗の牛車なんかあってたまるか。

・リアタイを経験した者として、氷室冴子平安ブームと夢枕獏陰陽師ブームは時期がズレている。

　正確には、岡野玲子陰陽師ブームとズレている。

　今のご時世、平安物をやるのにただ氷室冴子パロをやるだけでは足りない、陰陽師を足さなければ。

・文春の晴明公は1991年、講談社の京極堂は1994年。

　そしてKADOKAWAからは2009年。

渋川春海「私たち、もう地球が丸くて地動説なの知ってるし平安時代の暦とか使うの無理なんで天地明察しますね。陰陽寮の顔は立てますから」

　これから１０年も経ってるのに今更サイキック陰陽師なんか書けるか！！

　真の敵は社内にあり！

　ということで「ゆこう」「ゆこう」よりマジカルステップより「天地明察されるー！」の方が俺的重要度は高い。

・一人で京極堂と関口君を兼ねる男。一人で兼ねるのには無理があったから陰陽寮の愉快な仲間たちがいるのだが。

「助けてくれ京極堂！　憑き物落としを！」

「自分で禹歩（うほ）踏めよ」

「そういうんじゃなくって！」

・ページ数が足りないので省略した、陰陽寮による呪詛の処理：

１）呪詛事件が起きたら禹歩だの身固めの術だので五芒星の中心に立って盛大に迎え撃つ。

２）儀式の間に、下っ端従者が依頼主の家人に聞き込みして恨みを持ってそうなヤツがいないか聞き出す。

　大体、クビにされた使用人か姫君にフラレた男か破局寸前の夫婦か仲の悪い相聟（あいむこ）か。

３）陰陽寮か邸に持ち帰って本格的に呪詛の術師を探す、という名目で３日ほど間を空け、恨みを持つ「犯人候補」と交渉して小遣いを渡すなどし、

「呪術師に依頼して呪詛しました、ごめんなさい、って謝ってくれませんか」

　と頼み込む。

　金に困っているヤツだと話が早い。

４）依頼主に

「誰それが呪詛を頼んだそうです。呪詛をやってたまじない師？　ヤツなら死んだよ！」

　とばっさり報告。悪趣味な貴族が詳細を聞きたがる場合、

「自ら放った蠱毒（こどく）に全身を喰われ、それはひどい有様だったので速攻、死骸を焼いて浄化しました」

　と微に入り細を穿つグロ描写話芸を披露する。

５）こうして靖晶は２カ月で２人の「市井のまじない師」を「呪詛返しで殺した」のだった。

　なお平安京において呪詛は重罪で死刑だが恐らく「呪いの木簡（もっかん）・呪符・人形（ひとがた）」などの物証が出た場合であり、陰陽師個人の「霊感」で見抜いた呪詛は示談ということになるのを

「反省してますし術師が死んじゃったの、この人も超ショックみたいです！　最初っからわたしに相談してくれれば人が死ぬようなことはなかったのに些細なボタンの掛け違いがー！」

　とかお涙頂戴のフォローを入れて無罪放免にしてもらう。

　犯人になってくれと頼んだ手前、鞭で打たれたりしたら寝覚めが悪いし。

　リストラされた人とかだとそれ以上リストラできないし。

　相手が政敵とかの場合は

「話がおおっぴらになるとまずいんでわたしがまじない師殺した件で脅かしときますね！」

　とごまかし、相手にデリバリー占いでもするときにそれとなーく

「あの人、最近精神不安定でヤバいから下手に出てご機嫌取っとかないと刺されるかもしれないですよ」

　とか忠告する。

　陰陽寮が示談って言えば示談だろ。

　平安時代、死刑がないのが自慢なので朝廷としてもあんまり死刑執行したくない。

６）晴明公が最初に呪詛返しで殺したまじない師ってどうやって……

　薄々見当がつくから絶対それはやりたくない！　と皆でヘコむ。

・国立民族学博物館の市民講座で聞いたけど、江戸時代でも皆が皆、迷信深かったんじゃなくて

「人魚のミイラとか偽物に決まってる、トリックを暴いてやる」

　って作った細工師を突き止めて家に押しかけた人とかいたらしい。

　うちの父親は神社のせがれだが「お守りとか工場で作ってる」が口癖だ。

・晴明神社に怒られるんじゃないかな、というわけで３回目行ってきた。

　叡山に怒られる心配はしないのか？

　預流ちゃん麓（ふもと）までしか行ってないから（女人結界）

　一条戻橋と土御門、どっちに住んでもらうかメッチャ悩んだ挙げ句ブライトンホテル行ってきたら堀川の山背宮邸付近で不意打ちの通行規制によるとんでもない渋滞に巻き込まれ、

「車争いですか？　この車、様子を見てくる従者とかいないんですか？」

　と脳内平安人と会話する羽目になった。

・従五位の受領、七位のヒラ陰陽師、ミステリで言う「見えない人」

　平安時代後期の平安京には陰陽師のスペックをフルに発揮するマインドセットが既に上臈（じょうろう）から下臈（げろう）に至るまで人口に膾炙（かいしゃ）し行き渡っているので京極堂の蘊蓄（うんちく）を語らなくてもフルネームを名乗るだけで魔力が発生する。

　昭和時代に陰陽師をやろうとすると京極堂にならなければならないが、平安時代は陰陽寮に所属している人が陰陽師なので。

・彼もまたれべきゅー世界とは千年のタイムラグがあるので生きているうちは持ってなかったサイキック能力を死んでから獲得することができる。

　晴明神社の奥の方に歴代神主格でいるだろうから単品で出てくるのは難しいだろうが。

〝晴明〟と称する陰陽師の複合体サーヴァントの一部になる率が高い。

　ていうか〝晴明〟、微妙に時代がズレてる藤原道長を助けたり源平合戦初期に玉藻前と戦ったりしてるということは襲名制で泰親辺りまで〝晴明〟に含まれちゃうんじゃないの？

「生きててもイヤなのに死んでからも働くのブラックってレベルじゃないですね？　位禄も出ないのに何で責任負わされなきゃいけないんですか。嫌ですよ地球の平和とか未来の人が自力でどうにかすればいいじゃないですか。人類滅びるなら滅びたらいいじゃないですか知りませんよ」

「そこで即身成仏よ！」

・「平安京のキャスター」より「講談社の陰陽師」の方が強そう。KADOKAWAだけど。

・魔法戦。当初下書きで

「まああんまり言ってもかわいそうだからこのくらいで勘弁してあげよう」

　と超上から目線で譲歩してやっていたところ、他の作業をしている間に預流ちゃんが「お前腹立つんじゃ」と自力で言い返し始めて一週間くらいかけてこうなった。

　つまりヤッスーの台詞だけドバッと書いてあって「まあ仕方ないなあ今回だけっすよー」とつないであったところに、預流ちゃんの怒涛の反論が後から入るという時間差論争。

　っょぃ。

　あんなにボコスカに言い負かしたんだから責任取って結婚してやれ。

　男女といえど殴り合わないと真実の愛が生まれないという独特のシステムになっているため、明空は出てきてすぐ物理で殴り合い、こちらは言葉で殴る。

　明空と預流ちゃんはツンデレなだけで言葉のキャッチボールが成立しているが、この恐ろしい陰陽師はドバッと先に喋りたいことを喋り、預流ちゃんがめたくそ考え込んでからドバッと反論している。

　……やっぱりあんまり結婚しない方がいいな……テンポ合わないよ、君ら。

・俺、刑事が職務上知り得た機密をべらべら家族とか友達とか子供とかに漏洩するの苦手なんすよ。

　平成末期にやってると勘弁してってなる。

　しかしこいつがキレているのは別にローフルだからではない。

・これだけ読むと相手が女だから偉そうなんだろうって感じだけどこいつ初稿ボツ原でコトダマのパワだけで明空に勝ってます。

　ていうか初稿、今考えるとすごかったな……

　明空がこいつの陰陽師能力を引き出そうと言葉で圧をかけたら今よりはローフルグッド寄りだったヤッスーが勝手に打ちのめされて倫理とプライドを破壊されて闇のＴＮと化し、☆５アサシン「平安京のネクロマンサー」にリジェネレイト。

　恐ろしい泰山府君祭で死者蘇生し生死の境界を踏み越え、人間の命を自在に操る冥府の王にまでなった。

（※やはりファンタジー設定はありません）

　それはそれは立派なラスボスだった。

　人は殺してなかったがその頃、特に悪いことをしていなかった賢木中将の腹に手を突っ込んで血まみれになったりしていた。

　こう書くと何かすげーいやらしいことをしていたように見えるな。単なる怪我の手当てです。

　そのままさしたる理由もなくストレスとヤケクソの赴くままに自爆宝具で京の都を破壊するところを、預流ちゃんが愛の力で封印して終わっていた。

（具体的には鉄拳制裁と親愛のハグ。メッチャ殴った）

　どれくらいのポテンシャルがあるのか実験したら自分がどつき倒された初稿明空（死んではない）、今から思えば『ドラゴンボール超　ブロリー』のフリーザ様みたいだった。

　そういえばこのときに明空、長素絹着とったわ。魅了とは違うところに入ったんだ。

　……それは……ラブコメか……？

　プロット見て「逆ハーに普通の人枠とかいらないんじゃないっすか」とか言ってた担当さん、蓋を開けたら普通枠がラスボス「平安京のネクロマンサー」として立ちはだかっていたのを見たときどう思っただろうか。

　麻黄恐ろしい。

・初稿は五位鷺と明王、光源氏か業平か、庚申（こうしん）ごっこの部分だけ採用して残りボツ。

　光源氏か業平かと庚申ごっこが同じ章だったので実質８割ボツ。

「キャラはいいのでちゃんとラブコメにしてください」

　ということだった。

　全ボツよりキツい８割ボツ！

　五位鷺と明王も初稿と２稿で起きてるイベントは同じなのに描写がやたら怖かった。

　第二夜『鉄輪』はプロットが暗いから仕方ないとして、第五夜『檻』読んだらわかると思うけどヤッスー視点だと何書いてあっても怖いし鬱い。

　カタカナ語抜きで歴史小説に寄せると余計に重苦しいのかもしれない。

　下書き段階ではノリが軽かったのに何か一人で思い詰めてやさぐれていったんですよ。

担当さん「全部預流ちゃん視点で庚申ごっこのノリで行けませんか」

俺「無理言うなよ」

　できた。麻黄恐ろしい。

　ちょっと自分で自分が信じられない。

　終わりの巻がヤッスー視点なので五位鷺と明王もヤッスー視点のままでいいんじゃないかと思ってたがここが一番鬱くて怖かった。

「平安京のネクロマンサー」が顕現しないための軽いノリであり開幕平昌五輪でもある。

・ということで「ラブコメに相応しくない」として下方修正（ナーフ）が入り、「そんな陰キャよりおれのラブコメ要員っぷりを見てくれ！」と一人が前に出てきたのはいいとしてなぜかもう一人が対抗意識を燃やして単体宝具を持ち出してきて、それに伴って初稿では異常に強かった沙羅くんちゃんまで格落ちするという謎の現象が起きた。

　ラスボスとしての能力を封印されギャグキャラとして鼻血を出し暴走を防ぐために陰陽寮の愉快な仲間たちを配置され、これほど愉快な親戚に囲まれて悪事はできまいとガチガチに縛られてほどほどの「灰色の魔法使い」として生きていくことになったが一度闇堕ちしたＴＮ根性だけは元に戻らず、

「陰陽師、まだ闇堕ちがはみ出してるけどまあ」

　と担当さんにお目こぼしいただいたのが現状。

　前世は虫ではなかった、機嫌で世界を滅ぼすラスボス系彼氏だった。

　マジで今生で真人間になっておかないと後がないぞ。

　前世の愛の記憶も封印されたが改めて恋できるのか。

　意外とできた。

・初稿の２人。

「そ、そんなに好きかどうか自信ないけど交際しなかったら京の都が滅びるとまで言われると、そこまでわたしの貞操って死守しなきゃいけないものかしら……ちょっと考えていい？」

「この際、同情でも憐憫でも何でもいい！　愛してくれなきゃこのレーベルで書けないような中世暗黒の不良陰陽師になって平安の闇に消えてやるー！　ぼくを見ろー！」

「ものすごい地雷を踏んでしまった！　これってかなりタチの悪いＤＶよね！？　ちょっと坊主！　あんたがこんなにしたんだから責任取りなさいよ！　何笑ってんのよ！」

　その後、調子こいて受領マネーで預流ちゃん専用の別邸を建てて結婚を迫る。

「ぼくはあなたと一緒にいられたら幸せというだけで何もしないから、マジで何もしないから、ときどき膝枕してよしよししてほしいだけだから」

　流石に全力でフラレて、京の都から失踪。

　マジで死んだんじゃないかと心配してたら２カ月後、大峯奥駈（おおみねおくがけ）して役小角（えんのおづぬ）の秘術を学んで更に魔力を高めステータス強化して帰ってきた。

　別に彼女に相応しい男になるとかではなく橋の下にしゃがんで己の不幸を嘆いていたら通りすがりの山伏に拉致されて「そんなときは修行だ！」とか言われて最短コース終えるまで帰してもらえなかった。

　意味わかんねえ。

　ちゃんと今の方がマシになってる！

　すごいな！

　今生では大峯奥駈しないようにしろよ！

「平安京のネクロマンサー」覚醒フラグは厳重に封印したが、強化幕間「大峯奥駈」は一人でいじけてるとランダムに発生するからヨシ兄と離れないように気をつけろ！

・なぜか「平安京のネクロマンサー」はアサシン。

　恐るべき気配遮断スキルと明空限定のQuickで無限に星が出て回転するバフ宝具「陰陽師の言霊」、宝具級の異常な強さと汎用性のスキル「戻橋の式神Ｓ＋」「泰山府君祭」など多彩な能力を持つが、他人の心ない言葉や慢性のストレスによるスリップダメージでゲージが１個削れると自爆対都宝具「天（あま）つ罪（つみ）国つ罪許許太久（ここだく）の罪出（い）でむ」を瞬時にチャージして平安京を恐怖のどん底に突き落とす。

「化野（あだしの）の露、鳥辺野（とりべの）の煙。あらゆる凶事（まがごと）、罪穢（つみけが）れは吾（わ）が意のままなれば、京（みやこ）の平安なるは薄ら氷（ひ）の如し。盛者必衰は百年後の理（ことわり）にあらず。天つ罪、国つ罪、許許太久の罪出でむ」（今考えた宝具詠唱）

　普通に生きてるのがしんどくなったというだけで別段目的も動機も何もないままヤケクソでできることをやれるだけやらかす。

　具体的に何をするかはラブコメでは使用不可だっただけでミステリに使い回す可能性があるのでここでは伏せる。

　賢木中将は歴史修正したいのであって京都を滅ぼしたいわけではないので手を組むにしても気をつけろ。

　ていうか堂々とミステリの犯人側をラブコメに出そうとしてんじゃねーよ。

・うっかり京が戦火に包まれても「平安京のネクロマンサー」を解き放てば生き延びるにしても死ぬにしても華々しく活躍できることだろう。

　うわっこいつ保元の乱が前倒しになっても困らなさすぎ。

　平安を生きるのに向いてなさすぎ。

　カジュアルに首切られるようなサツバツ時代になっても案外今とストレス量変わらなかったりするんじゃないの。

　てか明空も僧兵軍団率いて参戦すればいいだけだから預流ちゃんしか止めるやつがいない。マジか。

・製品版では☆４キャスター扱いでかなり弱体化した「陰陽師の言霊」と「戻橋の式神Ｃ」、新スキル「陰陽師の目」を使う。

「陰陽師の目」は八卦の未来予知以外にサイドエフェクトあり。

　てか「泰山府君祭さえ使わなきゃいいんでしょ？」とばかりに新たに技を増やしやがった。

　油断も隙もありゃしねえこの和マンチ。

　勿論幸運Ｅ。ていうかファンブル振りやすい。

・登場人物の中で一人だけ暴力リソースのないヤッスーは魔法で火力を補うが、制御が難しくてほどほどでやめるということができない。

　賢木中将の陰謀スキルはまたちょっと仕掛けが違うのでいかに自分の得意なフィールドに引き込むか高度な戦略バトルが繰り広げられるだろう。

　三角関係ってか属性バトルじゃねえか。

・「平安京のネクロマンサー」の方はバレないように明空を殺す方法があったらためらわない勢いなのに明空の方には自覚がなく、「お前、やればできんじゃん」程度に思っていて前世も現世も関係なくなぜかこの期に及んで仲よくできると思っている。

「拙僧が天竺に行くときにはお前も唐まで連れていってやってもいいぞ、陰陽師。拙僧が大僧正になる頃までお前が生きていたらの話で帰りは自費になるが」

「えっ、絶対嫌です」

「大陸は陰陽道の本場なのに？」

「嫌ですよ戦乱の宋目指して沈没するかもしれない船に乗るの！」

　これで親切にしているつもりだし自分が命狙われるほど嫌われていることにすら気づいていない。

　明空、本当にローフルグッドなんだな……マジかよ……

・「地下五百メートルに敷設された裏設定」は「平安京のネクロマンサー」とは別にある。

・愉快なことに禁野いかがや出屋敷大雅の方がこいつの三倍くらい陰陽道の資料使ってる。

　だってこの頃の陰陽師は刀印の早九字なんかやらないとか言われても知らんやん。

　祭文とか調べるの面倒くさいわりに誰も褒めてくれないじゃん。

　どうせ道教といざなぎ流の資料じゃん。

　全部九字と急急如律令と野村萬斎超えてプリズムショーばりの禹歩と叩歯法（こうしほう）で何とかしました！　でいいじゃん。

　祭壇に玉串と幣帛（みてぐら）置いときゃいいじゃん。

　信太妻とかリンボマンとか大抵の晴明伝説は民衆がヒマになった江戸時代に急に虚空から生えてきた話だよ。

　こいつが知ってる陰陽道の真髄、門外不出の安倍家の家伝の秘って三平方の定理とかだよ。

・しかし今どきの推理ドラマを見ていると、

「陰陽師とか頭よさげな男が場の状況に全然関係ない小難しい数式を見せて数字を数えるだけで何かがメッチャ解決したような気になる」

　というのはこの千年で全く変わらない由緒あるアナログハックなのでは？

　一から十まで数えるだけで何かが解決するおまじないになるの、古代人が迷信深いからじゃなくてホモサピエンスの脳がそういう構造になっているのでは？

　それが民俗学の真髄なのでは？

　現代人も皆、単にテレビドラマに詳しい人とか単にヒアリに詳しい人とかに重たい人生相談しちゃうので、有名人の子孫で三平方の定理がわかる男にも人生相談しちゃうものなのでは？

　三平方の定理がわかる男は三平方の定理がわかるだけなのに。

・宇治拾遺物語に出家した陰陽師が祈祷しようとしたら仏教一筋の坊主に殴られ説教される話があるので、やはり神道と仏教の相性は悪いらしい。

　天神地祇は仏僧が嫌いなので僧の格好を見せるものではないらしい。

　仏僧なら陰陽道で金取っちゃいかんらしい。

　斎宮も仏教にかかわっちゃいけなかったしな。

　はしゃいだ尼が横にいちゃいけないんじゃないかな、営業妨害なんじゃないか。

　でも神社に坊主が必ずいる変な時代。

　陰陽道と神道の区別は全然ついてない。

　何なら修験道も区別ついてない。

　三平方の定理がわかる人とそれっぽいおまじないをする人の区別も全然ついてない。

・「美形カテゴリじゃないのに女に人気出そうな三白眼のチビ」

「デザインはピンと来ないけど動くと格好いい新作ライダー」

　表紙絵でリヴァイ兵長みたいなの出てきて見た目から性格悪いのモロバレになったらどうしようと思ったが担当さんが表紙詐欺を推進したのでこうなった。

　表紙詐欺に至った事情は、

「信じて送り出したさらまんどらは評論では褒められてたのに重版しなかった、シリーズ１作目が売れないのは作家のせいではなく表紙のあざとさがあれでもまだ足りなかったから！　やっぱりもっと男と男の手を近づけるべきだったんですよ！」

　と詫びを入れられたからなんじゃないのかな……

　出版業界は混迷を極めているよ……

　俺の中ではリヴァイ兵長どころか、どんどん頭身が縮んで一人だけ顔のデフォルメが極端で一松寄りのチョロ松を経て藤子不二雄作画くらいまで行ってるのでそれはそれで主張しづらいものがあった。

　横にすっごい耽美なイケメンがいて預流ちゃんもキラキラと少女マンガなのにこいつだけ四頭身くらいなんだが。

　脳内作画の担当者が違うので混沌としているこるもの先生の外見描写です。

　ＴＨＡＮＡＴＯＳのレギュラーメンバーとか全員作画が違うからな。

　いろいろと設定に無理がありすぎる。

　表紙の顔面の作画指定が雑だったのは指定できることが全然なかったという事情がある。

　そしてこいつは着るもののことを深く考えるとパニクるので実際に着ている衣装も雑なのだった。

　大体土御門の家の姉が着ろと言ったものを何も考えずに着ている。

　明空が衣装の形式を使い分けまくっていて賢木中将はいちいち毎日違う襲着てるのにお前というやつは。

・預流ちゃんが女にしてはデカくて預流ちゃんとヤッスーと明空、並ぶと全員160cm前後くらいでヤッスーだけ烏帽子（えぼし）の分、錯覚が発生する。

　この３人は「裸足か沓（くつ）か下駄か」という錯覚も発生する。何か草鞋（わらじ）ばっか履いてたけど。

　賢木中将180cmで兄宮さまがそれより高い。

　後はヨシ兄が170で沙羅くんちゃんが140。

　当時の平均身長とかガン無視のイメージ。

・明空はイケメンドＳ、賢木中将はタラシでいいとしてこいつを女性向けに売り込むキャッチコピーは何だ、と悩んで「理系」にしたかったが結局「不幸体質」になった。

　……「社畜」にするべきだったな……

・なのに狩衣でコサックダンス踊れるくらい運動神経いいよ！

　禹歩の練習として片足ヒンズースクワット、反復横跳びなど日々、ハードなトレーニングをしている。

　ヨシ兄がスケート靴履けっつったらプリズムショーをやるためにな！

　ギャグキャラになったからってそこまでしなくていいのに！

　ハイスペ物件だよ！

　基本的にこの話に出てくる男、全員めたくそ運動神経いい。

　暴力リソースは持ってないが物理攻撃を避ける反射神経と体幹はあるんじゃないか。

・寝つきが悪いが寝起きも悪く、血圧が低くて朝、起きれない。

　陰陽師、夜を徹してのおまじない儀式あるよな……

　夜中に天体観測もしなきゃ何してんだかだよな……

　昼夜逆転するよな……

　昼夜逆転は夜居の僧もだよな。

　もしかして登場する男キャラ、全員睡眠障害か？

・扇とか笏（しゃく）とかメッチャ置き忘れるので従者がいちいち帰る前に丁寧に捜す。

　従者、すごい雑に書いたけど２巻あったらヨシ兄の息子にしておこうな……

・一人だけ地下人（じげにん）で昇殿（しょうでん）できないとかわいそうなので受領の身分で下駄を履かせて従五位上（じゅごいのじょう）にしたが、かえってかわいそうなことになった。

　こいつに一番向いてない仕事なんじゃないか、平安時代の受領。

　まあどの仕事も平安京でやってる以上は結局「お気持ちを忖度する」ところに収束していくが。

・参考資料は岡本綺堂『玉藻の前』だよ、青空文庫だよ。

　安倍ンジャーズの衣装の設定とか全部書いてある。

　夢枕獏以前のサイキック陰陽師ものを参考に王朝文学のモブ陰陽師を書くというわけのわからない行為。