だだをこねる子供でも意気地なしでも良いよ

僕はまがまがしい夕日に照らし出されている廃倉庫を見て、子供扱いされようが入る気が全くしなかった。この廃倉庫からにじみ出る陰気だけでもまずい。

怒りと悲しみたたえる表情をしていた幽霊さんは一点子供をあやすように話し出した。

「だめっです。今入らないで何時入るんですか?ただの廃倉庫怖いものなんてありませんよ」

「あの陰気の量は見て分からないから?正直怖いよ」

「うーん?」

小首をかしげ、少し考えている様だった。幽霊さんには陰気が見えてないのかもしれない。

「分かりません」

笑みを浮かべている。僕が冗談を言っているのだと思っている様子だ。

僕の右手を取り、少し左右に振る。

僕と彼女の因果関係が幽霊さんに僕の体を使える事まで影響を与えている。

「きっと大丈夫だよ。行こう。ねっ?」

「だめ」

「意気地なしだね。ただの廃倉庫じゃないですか?怖いものなんてありませんよ」

「暗くなる前に帰ろう」

「これだけ私に言われて悔しくないんですか?聞き分けなさすぎますよ」

「専門家の意見を取り入れてほしい。今の僕には陰気や邪気を払う装備もなければ、霊力もない。僕の身を守る守り刀も持ってきてないし、入れないよ」

ちょっとむっとしながら返答した。

「ここまで着たんだから、入ろうよ。子供じゃないんだからね」

「君子危うきに近寄らずは大人の智恵だと思うよ。孔子様も言っているしね」

「虎穴に入らんずば虎子を得ずです」

「行こうよ。本当に頑固なんだから。もう私が取り憑いているんだから他の幽霊は取り付けないよ」

「でも、今は」

「さっきまで思ってましたけど、その後ろ向きの考え方を治したら、もっと素敵な二男性になると思いますよ」

そう言って幽霊さんは微笑んだ。

「明日じゃだめ?」

「明日だとだめです。入りましょう」

「でも何かが出てきたら、すぐに倉庫から出るからね」

「はい」

幽霊さんはとてもうれしそうに微笑んだ。

                            暗闇の中へ 続く

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