黄昏時の廃倉庫

ダウジングを用いて、何カ所から方向を計り、地図を突きつけてたどり付いたのは国道沿いの物流倉庫として用いられていた廃倉庫だった。

僕は喜びより、焦燥感の方が強かった。

まがまがしい夕日が廃倉庫を包み込んでいた。

現在、使われていないことは警備員のアルバイトをしていて知っていた。

この前の道の道路工事に携わっていたからだ。

もう10年くらい使われていないはず。

ていない、それも光の入らない空間は陰気に支配される。

ただの陰気でも体調を悪化させたり、精神への悪影響がある。

今は夕方、逢魔が時とも言う。

幽霊や妖怪の住む闇の世界と僕たち人間が住む光の世界が重なる時だ。

幽霊や陰気が見られる僕や精神だけの存在である幽霊さんには危険な時間帯で

何の準備も無しに入るのはまずい。それにこの町の安倍晴明神社に使える神人じにん、神社の雑用係の僕でも持ち主の許可なく入れば、不法侵入だ。警備員の仕事的にも神人的にもまずい。

何より逢魔が時と言うのは時間帯的にまずい。

だから僕はつぶやく。

「幽霊さん、明日にしない?」

幽霊さんはびっくりした声で訪ね返してきた。

「やっと見つかったんだよ」

声が弾んでいる。僕の言いたい事が伝わっていない。

説明していない僕も悪いけど。

「どうしてですか?」

焦りだし早口になる。

「今はちょっとまずいから」

「何がまずいんですか?」

「夕方だから。逢魔が時って聞いた事ないかな?」

「意味が分かりません。夕方がどうしたんですか?それに逢魔が時と言われても意味が分かりません」

「夕方の事を逢魔が時とも言うんだけど、幽霊さんや妖怪がいる闇の世界と僕たち人間の住む光の世界が重なって、どちらの住む世界か曖昧になる時間帯で、あっちの世界の住人の力が強くなる時間帯なんだ。なんの準備も無く行くのは危険な時間帯だよ」

僕はうまく説明できない事に焦っていた。

僕は倉庫を見る。

いかにも陰気が貯まっているのが分かる。

僕は幽霊さんから目を背けながら話す。

どうやら僕は倉庫に入れない事を幽霊さんに対して申し訳なく思っているらしい。

だけど濃すぎる陰気は、人の陽気に影響して、体調を崩させる。

陰気が見える分、僕に対して陰気は強い影響力を与える。

そして安倍晴明様の呪いも発揮されない。

呪いではなく、陰気はただそこに存在する力だからだ。

僕は死にたくなかった。

「この意気地なし!」

普通は逢魔が時の事は知識がないと分からない。

陰気の怖さも見える僕じゃないと分からない。

幽霊さんもただ廃倉庫に入るのがこわいだけだと思っている。

昼間に入念に準備して入るなら良い。

だけど今は時間が悪い。

逢魔が時は陰気の力もます時間帯でもある。

「意気地なしでも良いよ。今の時間帯は絶対に嫌。明日の朝こよう。な、お願い」

「・・・・・・」

彼女は怒ったと様な悲しい様な感情をたたえて僕を見ていた。


                    幽霊さんとコミュニケーションに続く

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