綺麗な音、中編
そこには・・・
そこには幽霊さんがいた。
失敗したなと思うと同時にそれもそうだなと思う。
本来、この手の占いは、ハンカチとか髪の毛とか、所有者との霊的つながりが強い物から霊力を感じて、本人の居場所を特定する占いだった。
だから幽霊さんに向かって振り子のペンダントが動くのは当たり前だった。
かすかな希望を感じて占ってみたけど、やっぱり僕の力じゃだめだった。
「ごめ」
僕は目を開けて、幽霊さんに話しかけようとする。
そして幽霊さんと目があった。
幽霊さんの感情が僕に流れ込んできた。
幽霊さんは僕に取り憑いていると言う霊的な繋がりがあるから、少しでも霊的につながりのある動作を行うと感情が伝わってくることがある。
幽霊さんの瞳には
期待。
不安。
焦り。
悲しみ。
それらの感情が入り交じった瞳をしているのが分かる。
そして、救いを求める様に僕を見つめている。
僕は先ほどの自嘲を悔いて、胸が苦しく切なくなる。
僕に一体何がでいるのだろう。
いや、何かをしないといけない。
幽霊さんの方がよほど苦しいのだ。
だから僕は安心させるように微笑んだ。
「大丈夫、ちょっと難しかったけどコツはつかんだから」
僕は自分に言い聞かせるように、そして幽霊さんを安心させるようにゆっくりとつぶやいた。
それからまた集中力を高めるために深呼吸をする。
僕が家に伝わる術を教わった時に父親が言っていた言葉を思い出す。
霊能力なんて気分の問題だ。できると思えばできるし、できないとあきらめたら底までの事だ。だからできる思うまで努力するのは当たり前だし、できると言う強い想いを持たないといけない。だから自分を信じること、信じられる自分を作り上がる事が大切だと教わった。だからできると言う強いイメージを持たないといけない。
「どこを見ているんですか?」
「へっ?」
僕は考え事をしていたので特に何も意識してはいなかった。
でも僕が地面に、幽霊さんがベンチに座っている関係上、僕は幽霊さんの太ももに視線が言っていたらしい。
そして気づく。
幽霊さんはとても綺麗な太ももをしていた。
「H、むっつりすけべ」
「ごめん、術の確認をしていたんだ。何も見てないよ。もう一度始めるよ」
僕はそう言うと術の準備を再開するのだった。
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