春の日差しの中で

僕は安物のマウンテンバイクを押しながら住宅街と畑が混在する道を歩いている。

道は狭くいけど、人通りや車の通行量は多い道だ。一方通行でないのが不思議な道だった。その道を幽霊さんの話を聞きながら歩く。

それにしても、幽霊さん見えない多くの人は、独り言を言いながら自転車を押している変な危ない奴にしか見えないと思う。

逆に僕の事を知っている人は無視して通り過ぎてくれる。幽霊騒動に巻き込まれたくないし、騒がれたくないと言う僕の気持ちを察してくれるからだ。

春の陽気の中、仮眠も取れなかった重たい頭で考えながら歩く。歩いているのは少女と言うのは面倒なので幽霊さんと呼びかけ会話を続けている。

「どこまで話を聞いたかな?」

「話を聞いていなかったんですか?」

そう言って僕は幽霊さんの幽霊さんの方を見る。

にこにこしていた。

どこか楽しげ紗英もあった。

「ちょっと考え事をしていてね」

「仕方ありませんね。もう一度、私の願いを言いますね」

「うん」

僕はうなずいた。

「私の死体を見つけて供養して欲しいんです」

普通死ねば、遺体は墓地に葬られる。

それが無いと言うことは犯罪だとしか思えない。

殺された恨みを晴らさないと成仏できないとか?

地縛霊が怨霊と化してのか?

恨みを晴らさないと成仏してくれないのかもしれない。

コワい案件なのかもしれない。

「今、とても失礼な事を考えませんでしたか?地縛霊で怨霊で怖いとか?」

「うっ」

どうして女性は感が鋭いのだろう。

でも幽霊さんは幽霊とは思えないほど、表情の変化がある。

今も両手握りしめてぷるぷる振るわせている。

「違います。地縛霊でも怨霊でもありません」

幽霊さんは勢いよく言い切る。僕は口角がつり上がりそうになるのを必死に押させる。幽霊さんは反応が今イチ人間でも幽霊でもなくてズレていて会話をするのが楽しい。コミュニケーションを取るのが苦手な僕でも会話に釣られていく。

きっと春の星だろう、それに眠たいし。

「死ぬのは仕方ないにしても、きちんと遺体を処理して供養してもらわないと死んでも死にきれません」

幽霊さんは言い切った。

僕の表情には気がついていないみたいだった。

「死んでますけど」

幽霊さんはうつむき寂しそうにつぶやいた。

女性とつきあった事が無いから比較できないけど、いろいろテンションが上がったり、下がったりと忙しい女の子だ。

僕はなるべく明るい声が話しかける。

                                   続く

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