第3話
平日の午前11時。「ガタン」と鈍い音が2階から鳴り響く。紐につられたソレはやがて水滴を垂らし、静かに揺れていた。
その部屋に老婆が入った。洗濯物を干そうとした老婆は偶然にもソレを目にし、瞬く間に腰を抜かしてしまった。
「誰か、、、誰か、、」と絞り取るような声で固定電話に手を掛ける。
「、、、もしもし、警察です」
「あの、、、孫が、、、孫が、首を、、」
「落ち着いてください。住所はどこですか?あと氏名もお願いします」
「えーと、あれですよ。あのー、、北新町2丁目10-23です。あと私は高田峯子です。」
「ほんとに北新町2丁目、10の23で合ってます?」
「本当ですから!早く来てください!でないと、、、」
「分かりました。高田さんすぐ向かいます。ですので落ち着いてください。」
電話は切れた。
少し経つと、豆腐を耳に入れたままつんざく様な音が聞こえてきた。
インターホンを押す。
中から電話の声とは違う人が出てきた。理由はすぐに分かった。そこに立っていたのは30代くらいの男性だったからだ。
「すみません、警察です。110番したのはこちらの高田さんですか?」
「いえ、違いますが、、何事ですか?」
「こちらから110番を受けまして駆けつけた次第です。」
「いえ、私はしていません。どの様な方でした?」
「高田峯子さんとおっしゃっていました。年配の女性です」
「ああ、峯子さんね、したら斜め前のお宅ですよ。」
「そうでしたか、それは大変失礼致しました。お騒がせしました。」
なんと高田宅は2軒あったのだ。老婆は住所を間違って通報していたらしい。
今度こそ本当だ。
「すみません、警察です。高田峯子さんはいらっしゃいますか?」
ゆっくりとドアが開く。
出てきたのはそれはまさしく電話の主であった。
「はい、、私ですが、、、」
「こちらから110番がありました。いかが、、「え、なんの事でしょう。私は通報なんかしていませんよ、、、、、、、、
人夢 宇宙毛蝨 @uchukejirami
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