第2話
周りを見渡すと、両隣りは無言であった。
静寂の中にかさかさと鳴り響く作業音が私を無の心情に駆り立てる。
私は紡績工場にいた。私だけではない。高校の同級生が右、左と両隣りにいる。
どうやら集団就職したようだった。
彼らは声も発さず、水平より30度下を向き仕事をこなしていく。
灰色の壁や配管に囲まれた無機質なその作業場は時としてやかましく感じる。
ベルが鳴った。昼休憩だ。私は作業場を後にし、工場を出る。全部灰色だ。
灰色の空、灰色の壁、灰色の配管、そして作業員の物であろう車までもが灰色だ。
それはモノクロではなく、色として灰色が使われていた。
腕時計を見る。
「しまった、もう1時になる」という様な心情に駆られ自分の職場に戻る。
彼らは以前30度下を向いたまま作業を続けていたようだった。
この虚無感は何故だろう。学生の頃はあんなにはしゃいで楽しかったじゃないか。
どうしてだ。仕事だからか。自問自答したが答えはとうとうやってこなかった。
彼らは彼ら同士も私とも目線を合わせる事なく作業を続けていた。それは私も同様だった。
私も30度下を見つめ、また作業に没頭するのであった。
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