人夢
宇宙毛蝨
第1話
朝10時、鈍い目覚めと喉の渇きがやってきた。と同時にスクリーンは去っていった。まるで年代物の映画の様にモノクロだが、目の前の卵は現実味を帯びたように艶やかだった。
私は中学校の校舎の中で急いでいた。何をそんなに急ぐものか、私は私に問いかけたが返事がない。なぜなら私は私であって第三者の私が私を見ているからである。
チャイムが鳴る。もはや午前なのか午後なのかは分からないが、半袖を着ているから夏だということは容易に想像できる。
夏休みであろうか。校舎には人影が無く私一人だ。白と黒で彩られた校舎は寂しいようで明るかった。
エナメルなんか持ったこともないのに私はそのバッグを抱え懸命に走り、二階から三階へ駆け上がっていく。
その世界に色が着く。妙に濃いぐらいに懐かしく感じる。
小学校時代の恩師だ。私は先生に書類を渡した。「提出期限は守りなさい」と言わんばかりの眼差しでこちらを見つめたまま微動だにしなかった。私はバッグに入れた書類を先生に差し出したが、先生はマネキンの如く動かなかった。
私は走った、どこへ向かうのか。過去か、或いは未来か。先生の眼差しは焼き魚の様ににどこも向いていなかった。
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