6
私が桜井蛍くんに恋をしたのはいったいいつだろう?
とそんなことをいつもの病院の一階にある自動販売機横のベンチに一人で座って、いつもの缶コーヒーを飲みながら、貝塚菜奈は考えていた。
その具体的な時期を菜奈は特定することができなかった。
もしかしたら初めて会ったときから(それは今、私のいるこの場所だった)私は蛍くんに恋をしていたのかもしれないし、どこかのタイミングで、運命の電車がその走っている線路を切り替えるように、蛍くんに恋をしたのかもしれなかった。
菜奈はそんなことを考えながら時計を確認する。
そろそろ、この場所で父を待ってから二十分が経過しようとしていた。
「菜奈。こっちに来なさい」
すると、受付から戻ってきた菜奈の父が菜奈にそう言って手招きをした。
「はい」
菜奈は空っぽになった缶コーヒーの缶をゴミ箱に捨ててから、ベンチを立って、父のいるところにまで移動をした。
「お母さんの手術。いつに決まったの?」
病院の出入り口のところで、菜奈は言った。
「二週間後。……菜奈。それまでに一応、心の準備をしておきなさい」と菜奈の父は菜奈を見ないで、(菜奈はずっと父の横顔を見ていた)そう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます