第44話「襲来」
ドーン…
どこからか聞こえてきた音で同好会のメンバーは起きた。
「なんか変な音がしなかったか?」
まだ朝の六時前ということで、まだ眠い目をこすりながら会沢がみんなの方に聞く。
「ん~…ここって火山とかありましたっけ?」
小金井はなんとなく火山が噴火した音だと思った。もちろん、火山が噴火した音など聞いたことはなかったが。
「いや、それはない。なんかが崩れたような音も聞こえたけどな」
会沢はとりあえず皆に着替えるように言った。
「おそらくだが、島の裏の方から聞こえてきた音じゃないのかな」
十人全員が集まってから会沢がとりあえず推測を述べた。
「土砂崩れでも起きたのかな。確かめに行ってみます?」
菊田が提案する。
「もし土砂崩れとかだったら、危険じゃない?」
青木はあまり乗り気ではない。
「とりあえず確かめて、もし何か起こっていたら連絡して早めに帰ることにするつもりだから、とりあえず僕は部長として確かめに行ってくるよ」
会沢がそう言い、音がしたと思われる場所に向かおうとすると、他のメンバーもなんとなくついていくものが増え、結局全員が向かうことになった。
全員が、音がしたと思われる場所に向かったが、特に土砂崩れなどは起きていなかった。しかし、地面や草を見ると、何かが通ったような跡が見れた。小金井や菊田ぐらいがそれを見つけたのだが、特に気に留めなかった。
昨晩見つけた魔法陣のような模様が書かれた場所につくと、明らかな異変を見つけることになった。……そう、人がいたのだった。十人全員が、この島には同好会のメンバーしかいないと思っていたので、驚いた。
まるで魔法使いが着そうなフード付きのマントを羽織っており、顔ははっきりと見えなかったが、その人物は男だということは全員に分かった。
「なあ、あんた誰だ?」
皆が黙ってしまったなか、菊田が最初に話しかけた。するとマントの男はゆっくりとこちらにいる十人を一人ずつ見ていき、
「十人か。まあ、確認程度にはなるか…」
と呟いた。自分の発言を無視されたような反応を取られた菊田はムッとしながら、
「おい、聞いてるのか?これはあんたがしたのか?」
地面などを指さした。昨日の夜にあった魔法陣の所はひび割れ、まるで何かが出てきたような痕跡があった。音の正体はこれの事なんだろうか、となんとなくその場にいた全員が思った。
「…まあ、そうだが」
マントの男はようやく菊田の問に答えた。
その時、さらに異様なことが起きた。……いや、異様なものがやって来た。
その見た目は、大型犬のようでもあった。鎌のような二本足が余分についていることや、その目がカマキリのような目だということを除けば。
「……戻って来たのか」
マントの男がめんどくさそうに言った。大型犬とカマキリが合体したような怪物はマントの男の方に向かっていた。その犬とカマキリの怪物の様子を見るに、危険な雰囲気しか感じれなかった。マントの男もそう思ったのか、近づいてくる犬とカマキリの怪物の方を向きながら、何かを唱えた。
男の手の先から、バスケットボールほどの大きさの炎の塊が出された。しかし、犬とカマキリの怪物はそれを軽くよけ、マントの男にとびかかり、右の鎌の足で右肩から切り裂いた。
まるで、スプラッタ映画を見ているかのような量の血がマントの男から吹き出し、男は倒れた。
十人はそれを見て、息をのんだり、声にならない悲鳴をあげた。
「…っ、逃げるぞ!」
固まっていた一同だったが、犬とカマキリの怪物が十人の方を見ていることに気がついた会沢が叫んだ。その声に反応するように、一同は来た道を戻るように駆け出した。生い茂っている草や、木の枝が体に小さな傷を作っていくことにもかまわずに十人は全力で走った。
「うわっ」
木々が茂った場所から村の建物などが見えてきた場所に差し掛かったところで、芳賀が足を取られて転んだ。菊田や屋代が振り返り、助けに行こうとした。
「ちょ、ちょっと待っ」
手を伸ばした芳賀の言葉そこで途切れた。芳賀の背中に乗った犬とカマキリの怪物は、先ほどマントの男を切り裂いた足とは逆の足の鎌で、芳賀の頭と胴体を切り離した。
「芳賀!」
「うわぁぁぁぁあああ!!」
「いやぁぁぁぁあああ!!」
その光景は更なる恐慌をもたらすのには十分で、残る九人は他の人物にかまう余裕もなくとにかく全力で走った。
どれだけ走ったのかわからないくらい九人は走った。一度は散らばって逃げたが、寝泊まりしていた建物に九人が再び集まった。
「な、なんなのよあれ!」
パニックを起こしている牧坂を他の女子二人が落ち着かせている。青木と根津は、騒いでいる牧坂を見ることで、いくらか冷静になれた。
男子メンバーも似たようなものだったが、頭の中にあったのは、芳賀のことだった。助けることができたのではないかと、後悔のような気持ちがあった。
「あのマントの男がなんなのかとか、あの犬とカマキリを混ぜたような怪物はなんなのか、っていう疑問はあるが、一番の問題は、外部と連絡がつかないことだ」
いろんな機材をいじっていた会沢が残りのメンバーに伝えた。
「連絡が取れない?衛星電話でもですか?」
屋代が信じられないというような顔で聞き返す。地球上のあらゆるところでも連絡が取れるほどの衛生電話を持ってきたのは、屋代だった。
「ああ。俺たちには理解できない不思議な力が働いているようだ。魔法みたいな。」
会沢の言葉を冗談だと笑ってやりたかったが、先ほどあのようなものを見た一同は否定することは出来なかった。
「そ、それなら、どうするんですか?このままずっとここに?」
震えぎみの声で小金井が聞いた。
「いや、それはない。迎えの船は明日の昼頃にはくる約束だ。もちろん、外からやってくる船が島にちゃんとつくなら、だが」
冷静に話しているように見える会沢だったが、先ほど見た光景が忘れられず、手が微かに震えている。
「…少し俺に考えがあるんですが。」
会沢の言葉を最後に重たい空気が流れていたが、菊田が立ち上がり話始めた。
「あの化け物を倒しませんか?」
「本気か?」
深尾が聞き返す。とてもじゃないが、あんな化け物とは二度と会いたくないと思っている顔だった。それは他のメンバーも似たようなものだった。
「はい。いつこの島から出れるか分からない以上、俺たちの生命を危機にさらすあの化け物は倒してしまったほうが得策だと思ったんです。それに…」
言葉を続ける菊田。
「それに、芳賀の敵討ちもしたいです」
菊田は覚悟を決めた表情をしていた。そんな菊田に屋代が続いた。
「……わかった。俺も手伝おう。…それで、何か案はあるのか?」
屋代に聞かれ、菊田は少し困った。これといって考えがあるわけではなかった。
「…あのさ、少し思いついたんだけど……」
小金井が手を挙げて話始めた。
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