第6話「魔王城の戦い 武器編」
魔王城に行こう、と言われた三日後。
魔王城の受付を終え、俺とマリアは城の中へと足を踏み入れた。
魔王城と言っても、その実態は冒険者向けテーマパークのようなもので、入場料が必要だと聞いた時は驚いた。
「じゃ、早速行こっか」
目を輝かせて言うマリアの右手には、緑色のナイフが握られていた。
「まだモンスターも出てないし、武器を出すのは早いんじゃないのか」
「ふふふ……これはこないだ買った武器なんだけど、どこからモンスターがやって来るのか教えてくれるナイフなの」
楽しそうに語るのは良いが、ナイフを持って楽しそうにする美人も変な感じだな。口には出さないが。
モンスターによっては、植物に擬態したり、壁の中に隠れて、冒険者たちが近づいたら襲い掛かるやつもいるらしく、そうした不意打ちを防ぐアイテムらしい。
そんな会話をしていると、
「上からモンスター!!」
と緑のナイフが急に声を出した。
つられて上を見ると、蜘蛛みたいなモンスターがへばりついていた。
「うおっ」
天井から落ちてきた蜘蛛をよける。二メートルくらいあるそのモンスターは、当たっただけでも結構なダメージをくらいそうだ。
「すげーな。天井から襲ってくるのも驚いたが」
素直にナイフをほめると、マリアは少し嬉しそうに、
「でしょ?まあ、少し問題があって…」
と話している俺たちに向かって、蜘蛛のモンスターが飛び掛かって来た。
マリアは一瞬両手を耳に触れ、右手に持っているナイフでモンスターを横から斬りつけた。
ズバアアアアアアアアアアァァァァン!!!!!
斬られたモンスターは淡い光につつまれて、消えた。
斬られた瞬間、緑色の血とかを吹き出していたはずなのに、それらが気がついたら跡形もなくなくなっていた。
が、それよりも……
「うるさくね⁉」
そうなのだ。先ほどマリアが斬りつけた瞬間、ナイフ自体が音を出していたのだ。そのあまりの音の大きさに、俺は両耳をふさいで地面にうずくまるしか出来なかった。
俺のツッコミに一拍おいて、マリアが耳から耳栓らしきものをとり、
「……あ、そうなの。この武器は、使うときにものすごい大きな音をだすから、耳栓が必要なの」
「じゃあ、俺にもくれや!なんで自分だけ耳栓つけてんだよ!」
「これしかないから。……それより、今の音を聞きつけて、新しいモンスターたちが来るわよ!」
その言葉の通り、ナイフが「前方からモンスター多数接近!」と言っている。
「待て、そのナイフはもう使うんじゃ…」
ズバアアン!ズバーン!ズバババアアン!
再び耳栓を装着し、やって来るモンスターと戦うマリアから、自分の耳を守りながらナイフを取り上げたのはその十分後だった。
「ま、ずっと耳栓をしてるのも大変だし、別の武器も使ってもないとね」
俺にナイフを取り上げられたことに若干不服そうなマリアだったが、気を取り直してリュックから新たな武器を取り出そうとしている。
「こらこらこら。おめーは魔法を使えるんだから、へんてこ武器を使わずに魔法だけで戦え」
「魔法?まあ、別にそれでもいいけど……でも、この半径五十メートルを焼き尽くす毒針とか、この世界の海の三分の一を凍らせることのできるネックレスとか使ってみたかったんだけどなあ……」
とすごく残念そうに言うマリア。
「ちょっと待て。どんな殺戮兵器だよ。お前魔王に恨みでもあんのかよ」
というか使った本人も無事じゃすまないだろ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます