第15話 つつぬけ

「お待たせ」

「お帰り」

美雪さんが、戻ってきた。


「訊いたでしょ?」

「何を?」

「私の、あの方たちとの馴れ初め」

馴れ初めって、夫婦じゃあるまいし・・・


「どうなの?」

「訊きました」

「正直でよろしい」

なぜ、僕の事を話したかは、訊かないでおいた。


「みんな、そろそろ出発するよ」

「ハーイ」

「みんな、いるかな?」

「ハーイ」


主催者の方と思われる男の人が、数えている。

確認か・・・


「全員います」

そう男の人は、伝えた。


こうして、バスは牧場へと向かう。


「ねえ、冬樹くん」

「何?」

「ごめんね。いきなり・・・」

「いいよ。楽しそうだし」

「ありがとう」

その横顔は、悲しそうに見えた。


この手のイベントには、この場合は声優さんと、顔なじみの方もいる。

声優さんに限らず、最近はファンとの距離が近い。


でも、僕は初対面。

うまく、話せるか?


「平気だよ」

「どうして?」

美雪さんは、悪戯っぽく笑みを浮かべた。


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