無音


掌にある果実を握り潰した

音は無かった

多分どうでも良いことなのだろう

だから音がしないのだ

思考を巡らす必要も無いというわけか

指の隙間から汁が垂れた

おれはべとついた指で虹色の帽子を被り

でもそれが似合うおれなんてもう何処にもいない

純然たる破壊衝動に身を任せ

視界には憐れな残骸が転がるのみ

さよならの季節

今までずっと大切にしてきたものを

一瞬で放棄してしまおうとしている自分がいる

どうかしている

それを他人事のように眺めるのだ

ああこれはやばいなって

そう思いながら

きっとやばいことになるのだろう

誰か射殺してくれ

おれがやめてくれって言っても聞く耳を持たないでくれ


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