夏だった

おれのアイスバーに

陰毛が混入されていた

それが埋まったまま

固められていた

蝉は庭で発狂していた

おれはアイスのパッケージの裏を見ることにした

こんな文面が記載されていた

『商品には細心の注意をはらっておりますが万一の場合にはお買い上げの日時と店名とお客様の個人情報を記載の上、当社お客様相談窓口までお送りください』

そうはいかないぞ

おれは思った

おれは早速、通報をした

「もしもしいっ、あのですね、たった今、自分の食べたアイスバーの中にですね、いきなりこんなこと言うと驚かれるかもしれないですけど、まさかそんなことが実際に起こるとは想像もつかないでしょうけど、陰毛が混入されていたんですよ! 陰毛、陰毛ってご存知ですか? 多分あなたの下半身にも生えていると思うんですけれど………」

受話器を取った警官はうだるような暑さの中、突っ伏していた

クーラーが壊れた

そこへ電話がかかって来たのだ

突然、陰毛がどうとか喚き出す男からだった

「………」

警官は思う

おそらく自分の勤務するこの町にはこんな奴しかいないのだ

何とかしてほしい

それともそれを何とかするのが自分の役目なのだろうか?

まるで大掃除でもするかのように射殺しなくてはならない連中をたとえ表面上だけとはいえ守ってやらなくてはならないという矛盾

その問題が警官を終始、悩ませた


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