第18話 夢 『目覚めて、今』
最悪の気持ちで目を覚ますと、まだ見慣れない天井が広がっていた。
悪夢を見ていたらしい。寝汗がひどい。
時計を見ると、もう正午を回っていた。
どうりで部屋が明るいと思った。とりあえず水を飲んで、テレビを点けた。お昼のバラエティー番組が、行ったこともない都会のグルメを紹介している。
自分には関係のないことだと思いながらも、視覚から食欲を刺激され、冷凍しておいたカレーを食べることにした。
それにしても、ひどい夢だった。
はっきりと内容を覚えている。
当たり前だ、すべて僕が実際に体験したことなのだから。
どれも、僕がアメのことを隠す原因になった出来事だ。
こんな夢を見たのは、きっと先日の金髪豚野郎のことが原因だろう。
みんなに嘘をついたままなことが、どうしても罪悪感として積み重なっている。
過去の三つの経験から、僕はそれぞれ教訓を得た。
小学生のときの事件から、アメの力をみだりに人に見せてはいけないのだと知った。
だから、訓練してフォトンボールとしてアメの力を部分的に扱えるようになったし、アメにはなるべく僕の傍にはいないようにしてもらった。
中学の事件からはアメの力の強さを知った。
アメの力を目の当たりにするのは、あれが初めてだった。だから、二度とあんなことが起きないように、フォトンボールの訓練をさらに積んだ。
また、あの一件は僕の感情の高ぶりにアメが反応したことが原因だった。だから、小学校以来距離を空けていたアメとの関係を修復しようと努めた。お互いにちゃんと向き合えば、暴走することもないだろうと思った。
そして、高校での事件ではアメの恐ろしさを知った。
あの男たちにアメがなにをしたのかは、はっきりとはわからない。でも、とんでもないことをしたのは事実だろう。しかし、僕が最も恐ろしいと感じたのは、アメの力よりも存在そのものだった。
アメを手に入れるために、犯罪も厭わない人間がいる。
アメという使い魔は、僕のような平凡な人間の手に余るほど巨大で、強大だ。
でも、どんなに強くても、アメは僕にとって唯一の使い魔だ。
この事実は変わらないし、冴えない僕の最大の誇りでもある。
だから大学に入るまでにさらに力をつけ、信頼関係を深めた。
どんな困難も乗り越え、打ち勝つために。
まぁ、そんなことを言いながら初日から襲われてしまったけど、かけがえのない仲間を得ることができた。
これは、今までの僕にはなかった大きな進歩だと思う。
カレーを食べ終わる頃、やっと悪夢の残り香を消すことができた。
また気分が落ち込まないよう、空気を入れ替えることにした。
窓を開けると、気持ちのいい風が、カーテンを軽やかに持ち上げた。
暖かい空を見上げてふと、アメは今どこにいるのだろうと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます