人魚姫

 これは幼稚園児の雑誌の中にあったのか、独立した絵本だったのかは覚えていない。

人魚姫が王子に恋をして、声を失ってまで人間の姿になって、最後海の泡になってしまうという、ふつうの人魚姫の話とはちがい、母子人魚のものがたりだった。

おかあさんと別れ別れになってしまう人魚の女の子。多分嵐のせいだったように思う。なんだかとてもかなしい話だったらしく、自分が泣いたのを覚えている。

たまたまその絵本を読んだ日に、家の用事で外出する母についていったのだが、昔の南海平野線という一車両の電車に乗って、一面菜の花畑の中を通っていった。わたしは人魚姫のように母と別れ別れになるのではないかと不安になってそれを訴えた。その頃の母は後年の口やかましい母ではなく、やさしく大丈夫と言ってくれたような気がする。昭和28年頃の風景です。またしても、ストーリーの細部は覚えておりません。

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