本日したためましたのは、以前から申し上げている神格と行為の関連性の話ではございません。いえ、その話とも言えるでしょう、しかしもはや猶予はなくなってしまったのでございます。
ある男子大学生の話です。女子大学生の話でもあるかもしれません。
まずは私の話を致しましょう。
ご存知の通り私は観測者です。
東都大学のある土地をこれまで見守っておりました。あの土地は磁場が悪い。引き寄せやすい。探るため上京し、私はこの土地に根を張りました。そして道通様のお力を借りてそれを発見いたしました。木の下闇、地の中深く深くに埋まっておりました。人が見ても単なる金属の玉だと思うでしょう。
私がそれを手に取りましたところ、頭の中で星が弾けたような感覚がいたしました。爺の戯言ではありません。確かに弾けたのです。
道通様はそれに決して触れるなとおっしゃいました。しかし私は既に触れ、なってしまったのです。あれは神ではありません、あの星は大八州のものですらありません。私はあれが何か分かっております。しかしその名前を書いても読んでも、良くないことが起こるでしょう。どうか許してください。
私はここに祠を建て、あれを神として、大八州の神として祀ることでどうにか鎮められないかと考えました。この地に住む人々、子供たちがなることのないように。そして道通様のお力もあって、何年かはそれで間に合っておりました。
その後ご存知の通り東都大学がこの地に建ちました。爺ひとりの反対など誰も聞くものはおりませんでした。しかしあれのあるこの地だけは、如何なることがあろうと守り通したのでございます。その甲斐あって東都大学の学長先生ともお話することが出来、ある程度のご理解を得ることもできました。これで貴社の取材を断っていた理由もお分かりいただけたと思います。
ここからが本題でございます。先日東都大学のとある男子大学生があの星を手に取りました。
女子大学生も一緒でした。私の見立てでは二人ともなっています。そして、女子大学生の方には恐ろしいものがついております。あれがついに器を見つけ、冥府より這い出て来たのです。
私はもうすぐ死ぬでしょう。道通様のお力に縋ることも最早叶いません。
あれは大変な厄災を齎します。私だけではありません。何人も死ぬでしょう。しかし警察や医者にはどうすることもできません。東都大学にも手紙を出しましたが、恐らく老人の妄言と無視されるでしょう。
虫のいい話だということは分かっています、しかしあなた方しか、それがたとえ面白半分でも、私の話を信じるものはいないのです。あなた方に縋るしか道はなくなってしまったのです。
どうかあれを壊してください。あれを二度と出てくることのないよう破壊してください。あれがある限りこの土地はどこまでも呪いを広げることでしょう。私が死に、道通様のお力添えがなくなれば、あの大学生二人を通じて、錆のようにどこまでも腐食いたします、大袈裟に聞こえることでしょうが、あなた方にとっても他人事ではないのです。
最後になりますがあれは金星です。それで『かがせおさま』の名前をお借りしたのです。どうか、名前が分かりますように。あなた方がこれを読み、成功することを強く願っております。
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