第27話 エリートの論理

 供養の後に、僕は自身の推理を披露した。

「小説でもそんなに都合よくはいかない。」

 一人の青年が、入り口に立っていた。大曽根福太。スーツ姿でいかにもいけすかない好青年という感じだ。


「実際は、僕は下の店に、伯父を迎えに来た。マットを庭先に一時的に置かしてもらう交渉はしたがね。人騒がせな話かもしれないが、道頓堀の飛び込みほど迷惑はかからないだろ。僕たちは、野次馬が来る前に急いで帰った。だから、細かなことは知らない。」

 それが本当だとしても、救助に出てきてもよさそうなものだ。

「秘書は議員の立場を守るのが仕事だ。実際に何か救助的なことをしても、マスコミはそこにいたことを面白おかしく書き立てるだけだ。いいことをしても書かれない。それどころか、売上のために悪意を捏造して書きたてるものさ。こっちの世界に来たときから、僕らは君等が思うような人という存在ではなくなったのだよ。」

 彼は、一呼吸おいてさらに続けた。

「このことを、マスコミにでも言うかい?だが、それで誰が得をする?週刊誌が売れ出版社は儲かるだろう。人々はわれわれをののしって憂さ晴らしができるかもしれない。それで気が済むというわけかい?」


 僕は悩んだ。その場から逃げ出したことは褒められるものではない。しかし、罪を犯したわけでもないのに、世間のさらしものしてもいいものか。世間は天使の死の真相など興味もないだろう。しかし、それで天使の魂は救われるのだろうか?

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