第26話 推理

 僕の推理はこうだ。同窓会の中心的人物として、大曽根がいた。やつほどの身分になれば一階のバーにも頻繁に出入りできるはずだ。選挙に備え、同窓会を巡っていたに違いない。めずらしく天使が同窓会に来たものだから、布団屋はドッキリを用意した。廃棄するマットを窓の外に運ばせた。一階とは大曽根が話しをつけたのだろう。あるいは、ヤツが一階で見張っていたのかもしれない。準備が整い、カラオケが鳴った。本来なら天使はマットの上に落ちるはずだった。しかし、マットは浮浪者によって移動していた。


 幸い、大曽根はその場にいなかった。おそらく、天使が飛び降りた後、一緒に店に入ってくるつもりだったのかもしれない。ヒーロー登場。ところが、天使は死んだ。あわてた連中は、布団屋のミスとして口裏を合わせた。わざわざその場にいない大曽根の名を出すことはない。庇いきれば、一生仕事を回してもらえるかもしれない。それこそ、大事な金のなる木だ。


 たしかに、罪にはならないだろう。選挙を犠牲にするほどのことでもないかもしれない。社会的な責任は無いかもしれないが、それでは遺族は救われない。罰を受けろというのではない。遺族や死者への誠意の問題である。

 金で解決するものなら、それもいいかも知れない。ただ、真実知りたい。それが、天使と遺族の思いだ。


 僕は、店での供養の日にこの推理を彼らにぶつけることにした。

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