第25話 卒業名簿
日も落ちたころ、天使の家に行き、いままでわかったことをとりあえず話した。
「あの子もお調子者ですから、他の方を攻めるわけにもいきませんわね。」
おばさんは、相変わらず落胆している。
「なるき君がこうして来てくれるだけでもあの子も喜んでいることでしょう。」
いや、実際に俺の後ろで笑っている。
「これが中学のときの卒業アルバム。」
そういって、一冊の厚みのある重たい本を持ってきた。クラスは違ったが確かに坊主も布団屋もいる。ぱらぱらとめくっていると、見覚えのある苗字があった。大曽根福太。このあたりで、大曽根というと有名な国会議員が思い浮かぶ。
「この子は、大曽根議員の甥子さん。いまは、秘書のようだけど次期衆議院選挙には出馬するってうわさね。夜な夜な、同窓生を集めては意見交換会を開いてるわよ。大福なんて縁起がいい名前だわよね。」
ん?待てよ。選挙に出るには歳が足りないんじゃないか。
「彼は、帰国子女で父親がアフリカのほうで外交官をしてたらしいの。本来なら高校生になるところを学力が不足しているってことで中学3年に編入してきたわ。帰ってきた理由が、おじさんの地盤を引き継ぐためだったのね。高校を出たら、そのまま議員秘書になってしまったの。だから、いまは24か25歳ぐらいじゃないかしら。」
なるほど、上級国民一族ってわけだ。こいつがその場にいたとは思えないが、もし事故にからんでいたら、平民どもは隠し通そうとするに違いない。しかし、貧民の自分がどうやってそこへたどり着くかが問題だ。
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